技術進化のみならず空力に対する考え方も変わった
まず空力の解析が進んで、ボディ全体で制御できるようになったのが大きい。つまり後付け的にスポイラーを付けなくても、しっかりとボディを安定させることができるようになったわけだ。
そして、空力に求めるものの変化もある。スポイラーはダウンフォースのために付けるというイメージだったのが、今ではゼロリフトとすることが多い。ゼロリフトとは下に押し付ける力と浮き上がろうとする力のバランスが取れている状態。もともとはレース車両で追求されていたりしたが、最近では解析技術によってフロア下の形状にも最適化されるようになって、市販車でも実現できるようになっている。
そもそもなぜゼロリフトがいいかというと、走るのに抵抗が少ないから。たとえばダウンフォースだと、グリップは上がるが、抵抗にもなる。だがゼロリフトなら、気持ちよく走れるだけでなく、燃費にも好影響となるので最近とくに追求されているわけだ。
そうなると、スポイラーに大きな角度を付ける必要もなくフラットなものとなるし、必要がない場合も増えてくるので、装着していないクルマも多い。ただ、それでも小さな羽状のものが、ミニバンや軽自動車のルーフエンドに付いていることがあるが、これは後端部が角張っているため、そこでの風の巻き込みを防止するもの。巻き込み、つまり風の渦が発生するとボディが後ろに引っ張られるようになるので、走行性能や燃費に悪影響を及ぼす。また、汚れも不着しやすくなるので、これを防止する役割もあったりする。
解析技術などクルマとしての進化が背景にあるし、求められる性能の変化があるとはいえ、やはり大型スポイラーを見かけなくなったのは少し寂しい。