未使用中古車を持つディーラーは業績が良い証拠とも言える
ディーラーが新車をメインとした自動車販売でしっかり利益を稼ぐなどということは、いまの日本ではありえない。これは日本だけでなく、自動車先進国のアメリカなどでも同じ話。新車ディーラーのメインの収益源は、車検や定期点検、板金修理、それに伴う物販などのアフターメンテナンス部門となっている。中古車販売に力を入れているのも同様。そのなかで赤字というわけではないが、カスカスの利益で新車を販売するのは、新車を買ってもらうことでアフターメンテナンスの収益につないでいくためだ。それがいまの新車ディーラーのビジネススタイルといっていいだろう。
ただ、そのアフターメンテナンスも、格安車検業者の台頭や、安全運転支援デバイスの普及による板金修理の減少もあり、けっして安泰ではない。ドライバーの高齢化などからクルマ離れも加速しており、新車への代替えの前に車検誘致も満足にできない状態となっている。
多数のセールスマンやメカニックを抱える新車ディーラーは、労働集約型産業といってもいい業態。中長期的にいえばAIによるチャット商談や、スーパーのレジではないが、店頭でAIを相手としたセルフ商談、メンテナンスサービス拠点の集約化などで、人件費の削減が急速に進んで行くかもしれない。そこまで追い込まれているのが新車ディーラーの現状なのである。
未使用中古車は原資がなければ作り出すことはできない。その意味では市中に未使用中古車が溢れるということは、まだまだ未使用中古車の多いブランドほど販売ネットワークの体力が弱まっていないともいえるのだ。
事実、アメリカでは自社登録ではなく、レンタカー会社へのフリート販売などで販売台数の上積みを行うのだが、メーカーの業績悪化を背景にフリート販売を手控えるという動きが一般的。そのため日本ではいままで存在が目立っていたブランドの未使用中古車をあまり見かけなくなったら、もちろんそれぞれのブランドの販売戦略による判断というものもあるのだが、「台所事情が苦しくなってきたのかな」と考えるひとつの材料になるといってもいいだろう。