ディーラーとの深い付き合いを望むなら地場系が有利
ただ、そんなに良いことばかりではない。メーカー直資系ディーラーには、メーカーから出向してきてセールスマンをやっているひとがいる。このようなひとたちはディーラーにいながらにして、メーカー本体に籍があるのが一般的。そのため短いサイクルでメーカー本体に戻ったり、メーカー直資ディーラー間を異動するケースが目立っている。いまどきは、新車販売セールスマンも新入社員時を除けば、退職は以前よりはるかに少なく定着率が高い。そのなかで、メーカー直資系ではメーカーから出向してきたセールスマンが担当になると、すぐに担当セールスマンがいなくなることが多いので、長くその店とつきあうということが難しくなる可能性が高い。
メーカー直資系ディーラーは、店舗の規模が大きいケースも多いので、そうなると、新車販売と購入後のアフターメンテナンス窓口が完全に異なることにもなりかねない。新車販売業界では、はるか昔から担当セールスマンがいなくなると、単純なメンテナンス客という扱いになりやすい。担当セールスマンがいれば、いざ何かあっても直接連絡して対処してもらうことも可能だが、担当セールスマンがいなければ、いちいち杓子定規にサービスフロントに話を通さなければならない。新車販売担当から見れば「客であって客にあらず」というような立場になってしまうので、結果的にあまりいい買い物をしたという気分にはならないだろう。
単純に値引き条件だけを追い求めるならば、メーカー直資系ディーラーが効率的だが、値引きはそこそこでいいから、セールスマンや店と長くつきあっていきたいとなると、地場資本系ディーラーとなる。
しかし、これはあくまでも一般論。直資系ディーラーでも人間的つきあいは可能だし、地場資本系が必ずしも人間的付き合いがより深くできるかと言えばそうでもない。ただし、今後は販売現場での人材不足が深刻化し、市場規模もさらに縮小していくので、メーカー直資系だけでなく、各地域の有力地場資本系ディーラーが、都道府県横断的にディーラーを統合して店舗運営を進めていく傾向はより強まっていくことが考えられる。
新車販売の利益だけでは新車ディーラーを経営していけないのがいまの新車販売の世界。スケールメリットを追求していかないと、ディーラー存亡の危機的状況となっているといっても、けっして大げさではないのである。