スタッドレスタイヤとまったく同じ性能を持つわけではない
しかしスノーフレークマークがあるといえ、雪道専用のスタッドレスタイヤを装着した車両とまったく同じように走れると補償されている訳ではない。トラクションコントロールやVSC(ビークルスタビリティコントロール)、ESP(電子制御車両スタビリティプログラム)などの電子制御と連携してなんとか低速走行で安全を担保させることができるというレベルと考えるべきなのだ。
そもそもメーカーが「SNOW」のタイヤ表記をタイヤに与えるうえで明確な基準があるわけではなかったと、あるメーカーのタイヤエンジニアは説明してくれた。トラクションやブレーキ性能など同じ走行条件のテストで夏用タイヤより優れていることが確認できればメーカーの自主判断で刻印ができるという。法律で定められた基準がないというのは驚きだが、雪道と一言でいってもアイスバーンやシャーベット路、圧雪路などコンディションはさまざまだから数値設定できるはずもないわけだ。そこでASTMの性能評価は意味を高めてくれているといえる。
また乾燥舗装路に関して言えば夏用タイヤと同じく残り溝深さが安全基準としてあるだけで、性能的な指数はない。冬用スタッドレスタイヤで夏の乾燥舗装路を走っても違法にはならないのと同じで、オールシーズンタイヤも夏場に使用することは法的な問題ないのだが、高性能ラジアルと同じ乾燥路グリップが引き出せるはずはないのだ。
逆に言えば夏の舗装路での性能はそこそこ。雪道性能もそこそこと中途半端な性能レベルであることは否めない。クルマの使用が市街地中心で、普段は降雪のない地域のドライバーが急な降雪で立ち往生しないための策としてオールシーズンタイヤを装着しているのは有効だが、それでウインタースポーツに出かけて行ったり、寒冷地や冬の山岳路が生活圏のドライバーが装着するのは避けたほうがいいだろう。
そうしたことを理解したうえでオールシーズンタイヤを選択しようと決めたのなら、その替え時は正に「今でしょ」。11月末までに装着し降雪時にはフレッシュな性能を維持できているタイミングで迎えられることが望ましい。夏性能の低下分より冬性能の低下のほうが早いステップで進むということを知っておいてもらいたい。