大型化は日本の保安基準に適合させるためという側面も
日本においても2018年6月15日以降に発売されている新型車については、電柱などを模したポールを使った側面衝突試験をクリアすることが求められている。こうした試験をクリアするためにサイドエアバッグの標準化も進んでいるが、やはり物理的に全幅を広げることが有効なのはいうまでもない。ボディのワイド化により3ナンバーとなっているのは、日本市場を無視した結果ではなく、じつは日本のルール(保安基準)に適合させるためという面もある。
考えてみれば、アメリカのような広大な土地は別として、欧州の古都などでは古い石畳の道も残っている。けっして道路幅に余裕があるわけではなく、どんどんボディサイズを拡大してもユーザーが受け入れてくれるわけではない。しかし、衝突安全性を高めるためにはボディサイズの拡大はやむを得ない、というのがグローバルなコンセンサスといえるだろう。
ボディのワイド化と共に進んでいるのがホイールベースのロング化だ。後席乗員の感じるひざまわりの余裕、いわゆるタンデムディスタンスを確保するにはシート形状での工夫もあるが、ホイールベースを伸ばすというアプローチが有効だ。前後のクラッシャブルゾーンも必要であるから、ロングホイールベース化によって全長も伸びる傾向にある。
また、ホイールベースを伸ばすと最小回転半径は大きくなってしまう。その解決策としてはステアリングの切れ角を大きくするのが常套手段。ただし、多くのフロントエンジン車(とくに横置きのFF車)では、パワートレインが邪魔してしまいタイヤの切れ角を確保しづらい。ここでボディのワイド化が関係してくる。ボディを広げて、タイヤの位置を外側にしておけば、パワートレインを避けることができ、切れ角を増やせるのだ。取り回し性を考えるとロングホイールベースとワイドボディは、ある意味でセットといえる。
まとめれば、最近3ナンバー車が増えているように感じるのはコンパクトカーまで幅広になっているからであり、その理由はおもに側面衝突の安全性を高めるためにある。居住性をアップさせるロングホイールベースとワイドボディの相性がいいことも、そうしたトレンドに拍車をかけているといえるだろう。