プラスアルファの価値の創出はカローラの守るべきDNA
インテリアデザインを担当した梶田正道さんにもうかがった。
「恩恵の大きさはインテリアでも実感しています。歴代のカローラが守ってきた価値には、多くのお客さまが求めやすい価格で提供するということがあります。と同時に、プラスアルファの価値を提供したいということも守ってきたことなのですが、インテリアの質感はプラスアルファの価値を実現するうえで非常に重要な要素です」
「たとえば新型カローラのドアトリム。ゆったりとした曲線を描いた大型のドアトリムは、機能だけで言えば、この大きさは必要ないと言えます。部品が大きくなれば成形や保管など、手間やコストも大きくなりますから、コストだけを考えたら真っ先に削られる部分でしょう。けれど、感性に訴える品質を実現させるには絶対に必要なんです。デザインチームが大切にしたその考えを、より高いレベルで実現できたのは、チーム全体で一丸となった結果だと思います」
言われなければわからないような細部にも徹底的にこだわったインテリアデザイン。たとえば前席左右にあるエアコンの吹き出し口もそのひとつ。窓ガラスに映り込みやすい位置にあるこの部品は、素材の光沢の具合をはじめ、反射の仕方に影響を及ぼす断面形状なども考慮し、30以上もの形状を検討して決定されたもの。こうしたこだわりの数々が随所に発見できるのも、新型カローラのデザインの特徴のひとつだ。
質感の高さは、カラーデザインでも追求されている。新開発されたスカーレットメタリックは、中塗り層に赤を入れ、その上に少しオレンジが入ったカラー層が重ねられている。光の当たり方によって、深みの濃い赤や、少し黄味に寄った華やかな赤など、さまざまな表情の変化を豊かに見せてくれる質感の高い新色だ。カラーデザインを担当したのは山口麻夢さん。
「インテリアの素材についても、質感の高さを大切にしています。ベースグレードで使うシートのファブリックも、従来はやわらかいものでしたが、新型ではしっかりと地厚感のある表皮を開発しました。糸の色一本一本にもこだわった織物で、見た目にも上質さを感じていただけます。今回は、アームレストやコンソールにもこの素材を使い、インテリアの統一感のある美しさにもこだわりました」
「たとえばアームレストでは、性能上、シートと同じファブリックを使用することが困難な場合が多くあります。シートの素材は人が頻繁に乗り降りするので、しっかりとしたものを使いますから、しっかりしている分、アームレストに巻きづらいんです。今回は生産サイドとも早い段階から協力することで、巻きやすい形状処理の考案など、さまざまな工夫によって実現させました」
各部署が早い段階から協力してデザイン開発に挑めるのは、トヨタが2016年から導入している「カンパニー制」の効果も大きい。従来のように開発や生産などの「機能」で区分されていた組織を、車種ごとにまとめ直すという改革は、トヨタが掲げる「もっといいクルマづくり」の実現のためのもの。問題の早期発見や開発、新たな技術やデザイン表現などの実現のための、全部署一丸となった取り組みがしやすいなど、さまざまなメリットをもたらすことが期待されている。新型カローラのデザインも、その成果を大きく感じさせるものと言えるだろう。
こうして誕生した新型カローラのデザイン。最部にまで徹底的にこだわって質感を高めた内外装は、見て楽しむというよりも、見て味わうというのがふさわしいデザインと言えそうだ。