タイヤの接地性向上やレスポンスをよくする効果がある
ネガキャンというのは、バイクでいえば車体を倒してコーナリングしているのと同じ状態。つまり右のタイヤが内側に傾いているとは、車体を左に曲げようとする力が生じ、左のタイヤが内側に傾いていると、車体を右に曲げようとする力が働く。その力がちょうど中心でぶつかり、打ち消し合うことによって、まっすぐ進もうとする力=直進性を高くする。この直進性がネガキャンのメリットの1つ目だ。
2つ目は、ネガキャンがつくことで、左右のタイヤがそれぞれ曲がろうとしていて、直進時でもスリップアングルがついているので、ハンドルを切ったときにコーナリングフォースの立ち上がりが早くなる(キャンバースラスト)。つまりハンドル操作に対する反応がよくなるということ。
3つ目はコーナリングがはじまって、車体がロールしたときに、荷重のかかる外側のタイヤが沈み、さらにタイヤ自体が変形して、タイヤのトレッド面の外側だけが接地することになり、タイヤの接地面が減ってしまう。それを防ぐために、あらかじめロール時の傾きを考えて、ロールしたときにタイヤの接地面が最大になるようタイヤを内側に傾けておく=ネガキャンにするというのがレーシングカーの発想。
パラリンピックの車いすマラソンや車いすバスケットなどの車いすは、どれもレーシングカー顔負けのかなり角度のついたネガキャンになっているが、あれも直進性と旋回性、そして転倒しにくくなるという安定性と、漕ぎ手が人やモノに接触しづらくなるという安全性のために、あえてネガキャンになるよう設計されている。もちろんネガキャンにはデメリットもあってやり過ぎは厳禁。
具体的にはタイヤの偏摩耗や、回転する抵抗が増えてハンドルも重くなる。さらに直進時の接地面は狭くなるので、トラクションやブレーキ性能が落ちる。また車体から大きくタイヤがはみ出せば、保安基準違反にもなる。
いずれにせよ、ホイールアライメントはクルマの走行性能にダイレクトに影響するので、メーカーもかなりシビアに考えて設計しているため、その適正値に収めていくことが重要だ。