JC08の数値を大幅に下まわることなくWLTCモードに対応
──そのほかにボディ・シャシーの変更点はありますか?
工藤:基本的な骨格は流用しています。サスペンションも結果的には同じものになっています。というのも、クロスタ−で新しいホイールを採用して、その剛性バランスが変わったり、またEPSのセッティングを変更していますので、サスペンションのセッティングを変更する可能性もあるという話をしていたのですが、結果的には今までのものでいけましたね。手前味噌ですが、それだけマイナーチェンジ前のモデルが優秀だったので(笑)。
──サスペンションも、ガソリン車とハイブリッド車、FFと4WDとで全部セッティングを作り分けているのでしょうか?
工藤:掛かる荷重が変わりますとスプリングの形も変わりますので、仕様ごとに微妙に変えています。
──今回WLTCモードに対応しつつ、全グレードで「平成30年排出ガス基準75%低減」レベルを達成するのに苦労した点は?
手嶋:正直なところ、WLTCモード対応すると、当面併記するJC08モード燃費が悪くなる部分が出てくるんですが、それを落とさずに対応しなければならないのが大変でしたね。それでも、マツダさん以外は積極的に取り組んでいないWLTCモード対応に、ハイブリッド車もガソリン車も強い気持ちで取り組んできました。
──冷間走行に関するWLTCモードとJC08モードと違いは?
手嶋:コールドスタートしてから走り出すまでの時間が短いので、一番排ガスが厳しい所の対策をしなければならないのが、とくに難しかったですね。
──そして、カバーする速度域が高い?
手嶋:そうですね。
──ということはエンジンの燃焼よりも触媒側の、できるだけ早く暖めるなどの対策が必要ということですか?
手嶋:触媒の貴金属量をアップするしかないですね。ほかのジャーナリストの方には「お客さまには一切見えない所にお金をかけているのね」と言われてしまいましたが(苦笑)。
──でも、法規対応しなければ売り物になりませんからね。
手嶋:外観の目に見える所が変わっていれば、お客さまは納得するのですが、触媒の貴金属量が増えていることはご存じないでしょうから。
──燃費や排ガスに対するニーズは、昔ほど高くはないのでしょうか? かつてはモード燃費の数値がコンマ1でも高い方が偉く、売れ行きを左右する風潮がありましたが。
手嶋:ないですね。
工藤:コンマ1まで求められる風潮は、今は昔ほど強くないと感じています。
──WLTCモードでは減ると思いますが、モード燃費の良いクルマほど実用燃費との乖離が大きく、クレームの種になっていたと思います。実用燃費の向上策は何かありますか?
手嶋:WLTCの低速モードが実用燃費に似てくるので、そこが悪いとイメージも悪いですし、実用燃費との乖離も大きくなりますので、そこはキッチリ出しています。高速側は車体の走行抵抗で決まってしまう所がありますので。