初めてのSUVでも乗りやすいよう徹底的にこだわった! マツダCX-30のチーフデザイナーが込めた思い (3/3ページ)

インテリアもマツダ3と似ているがCX-30向けにアレンジ

──インテリアの造形は、どのようにマツダ3から変えてきたのでしょうか?

 柳澤:基本的には、ドライバー周りの考え方はマツダ3と一緒で、まずは人間中心の左右対称のコックピットを作ろうと。違うのは助手席側の、ドア・コンソールの考え方ですね。インパネのフードがありますが、これが運転席のメーターから助手席を横断して、ドアトリムにつながって、囲い込むような造形になっています。そしてそのラインが降りてきてスパッと終わる。ここをスピード感のある、かつ包まれ感のある造形にしていますので、欧州で200km/h走行する時でも優しく包み込まれ、安心して乗っていただけるようにしています。後席も、同じような感覚を得られることを重視していますね。

 またコンソールは、マツダ3は駆け上がっているような形状ですが、CX-30は前に突き抜けるような形ですね。これはCX系共通の考え方で、力強さや前進感を表現しつつ、乗馬の鞍のようなイメージを持たせて、心地良い形を作れていると思います。また、インパネアッパーにネイビーブルーまたはブラウンを用いているのは、CX-30ならではです。マツダ3はブラックですね。

──インテリアは、見た目は似ていてもマツダ3とは別物ということでしょうか?

 柳澤:部品としては、メーターやステアリング、ヒーターコントロール、コマンダーなど、電子デバイスは共通ですね。ですがインパネやコンソール、ドアトリムなど大物の樹脂部品はCX-30独自です。並べて見ると違いがよく分かるのですが、とくに違うのはインパネのアッパーですね。

──シートの形状はマツダ3から変えているのでしょうか?

 柳澤:背もたれは共通にしています。シート自体の性能の考え方は共通なので、造形的にも変える必要がないと判断しました。ただ座面は、マツダ3と座らせ方が違い、脚を引っ込めた状態になりますので、前後とも形状が違います。

 またマツダ3は、天井やピラーを黒にしていますが、CX-30は敢えて明るい色にしています。これは、マツダ3はドライバーズカーなので運転に集中できるようにして、CX-30は4席が気持ち良くドライブを楽しめるよう、とくに後席が暗くなるのを避けるため、天井を明るい色にしています。その辺にもクルマのコンセプトの違いが表れていますね。

──インパネ天面をネイビーブルーまたはブラウンにしていますが、映り込みの要件はどのようにクリアしたのでしょうか?

 柳澤:映り込みに関しては厳しい条件がありますので、クラフトマンシップ開発グループと協議しながら、映り込みを数値化してその限界値を出してもらい、それを下まわる色の明度・濃さにしています。最初に作ったスピーカーパネルのモデルの色は明るすぎたので、量産車ではもう少し暗い色にしました。ですが今思えば最初に狙った色は明るすぎて、それを落としたことで結果的に落ち着いた色になったのが良かったですね。とくにネイビーブルーは明るすぎるとギトギトした感じになるので、これくらいナチュラルなブルーの方が、いろんなお客さまが見たときにも自然に乗れると思いますね。

──材質はどのようなものを使っているのですか?

 柳澤:インパネのアッパーは合皮と言ってもいい柔らかい材質で、パウダースラッシュという、昔からあるソフトなインパネを作る時の成型方法を使っています。シボの表現を非常に精密に転写できるメリットもあります。ミドルは合成皮革を巻き込んでいますね。

──ファブリック内装でカラーが選べるようになったのは嬉しいですね。

 柳澤:ひと昔前は安価なグレードですとファブリックの黒一色でしたが、それを打破したいというのがありました。私と寺島(佑紀さん。カラー&マテリアル開発担当)は以前デミオを担当していて、そのときに内装のバリエーションを増やした経験を活かして、CX-30はその大人バージョンとして展開しています。われわれ自身ももっとレンジを広げていきたいので、CX-30が成功してお客さまからのフィードバックを得て、それをほかの車種にも展開したいと思っています。

──そうなることを心から期待しています。本当にありがとうございました。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
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