すべてにおいて合格点をとるのがカローラの矜持
12代目となる、新型カローラが登場した。今や数少ない、伝統の車名だけに、今でも残っているのはうれしいことだが、長寿の秘訣はトヨタだけでなく、日本を代表する実用車ということだろう。派手さはないけど、実用性に富んでいて、快適だし、経済的でもある。
その根底にあるのが80点主義という言葉というか、コンセプト。クルマ好きなら一度は耳にしたことがあると思う。しかし、80主義の意味が正しくは伝わっていないことが多いようなので、改めて解説しよう。
一番多い勘違いは、100点じゃなくて、80点でいいというもの。つまりそこそこのものを作っておけばいいというのは間違い。実際は、すべてにおいて80点、つまり合格点を取るクルマという意味だ。
実際のテストに即してみると、得意科目は100点採って、あとは何点でもよしとすると、努力は必要だけど難しくはない。それがすべて、80点を採れとなると相当難しい。すべて100点を採れと言っているわけじゃない、と言われるかもしれないが、バランスよくすべてとなると努力もかなり必要だろう。
それがカローラの80点主義で、初代登場時のカタログを見ると、アピールポイントはてんこ盛り。デザイン、パッケージング、経済性、静粛性はもちろんのこと、高速道路時代を見据えて、ドライバビリティについてもかなり詳しく紹介している。この手抜きのなさが、80点主義というわけだ。全体の出来が100点じゃなくて、80点でいい、という未熟な意味だったら、そもそも今の今まで残ってはいないだろう。
初代の開発責任者だった、長谷川龍雄氏は戦争中、立川飛行機で戦闘機の開発をしていた、空力のスペシャリスト(ヨタハチも担当)であり、相当なこだわり屋であっただけに、単純に80点でなくていいよ、なんていう人物ではなかった。
ひとつだけ輝くのではなく、全体がまんべんなく、レベルが高いというのは、新型カローラにも見て取れるDNAと言っていいだろう。