スポーツカーだけでなく燃費重視のエコカーも空力を重視している
たとえば、純正で4段階の可変リヤウイングを装着した、日産スカイラインGT-R(R33)の場合、ウイングを一番寝かせた状態でも、後輪の揚力係数(CLr)は、-0.03。揚力をゼロにするだけでなく、わずかだがダウンフォースを得る仕様になっている。ちなみにウイングを一番立てた場合のCLrは、ー0.14。その代わり、空気抵抗係数(Cd)も増えて、Cd値は最低0.35、最大0.39となる。
レーシングカーでもそうだが、空力の難しいところは、空気抵抗とダウンフォースが、トレードオフになってしまうところにある。とはいえ、100km/h走行時に、リフトフォースがゼロkg=ゼロリフトと、リフトフォースが60kgもあるクルマでは、操縦安定性は大きく違うわけで、レーシングカーのようにダウンフォースまでは得られなくても、ゼロリフトの空力特性というのは、乗用車にとってもありがたいこと。
最近ではスポーツカーだけでなく、燃費重視のエコカーも空力チューンに力を入れているので、トヨタのプリウスなどは2代目の20プリウスから、ゼロリフトを達成。日産リーフも2代目 ZE1型でゼロリフトを実現している。
余談だが、国産車初の「ゼロリフト」を達成したのは、ホンダの初代シティのシティターボ。トールボーイといわれた初代シティが、ゼロリフトのパイオニアだったのはちょっと意外だったのでは? (Cd値は0.40)
少々話が逸れてしまったが、空気の抵抗は、前述の通り速度の二乗に比例する。70km/hで走った場合でも、クルマの全走行抵抗の1/4~1/3は空気抵抗になるので、まともなリヤウイングなら、70km/hぐらいから操安性に貢献してくる。
また、標準でリヤウイングを装着しているクルマは、リヤウイングがあることを前提にサスペンションのセッティングやタイヤのチョイスを行っているので、それらとウイングが一体になって、シャシー性能を支えているということを覚えておこう。