レヴォーグに乗ると今ドキのGTには賢いクルコンが必須と思える
これが進化か! 「GT!」、「GT!」と、試乗会中スバル関係者からすり込まれたためか、これまで当たり前のように乗っていたレヴォーグの長距離走行時の性能に感動する。
そもそもGTカーとして重要なポイントは何か? をこの試乗会を通じて考えてみた。
まずはゆとりあるエンジンのパワー&トルクだ。これはありすぎて困ることはない。それこそ日産GT-R NISMOのような600馬力だっていいのだ。
そして、センター付近のシッカリとしたステアリング。ダルなのはもちろん、前述のように過敏すぎてもダメ。
重心センターの低さ。公道はギャップもあればアンジュレーションもついている。また、横風が強い場合もあるだろう。いくらステアリングがシャキっとしていても車体の上ものが動きやすければ長距離では神経を使うことになる。
シート。これも大切。後席にひとを乗せるなら広さも重要だし、前席は適度なホールド性と座面やシートバックの硬さや反発力なども大きく影響してくる。
ラゲッジ。長く走るということは荷物も増える。容量がある程度確保されていなければならないだろう。
航続距離も重要だ。満タンでどれだけ走れるのか? 経験上、頻繁な給油や給電はストレスになる。エンジン車ならタンク容量と燃費の兼ね合いで決まる項目だ。
スポーティさ。ハッキリいっていくら安楽でも走りに感動がないクルマは飽きる。ある種のスポーティさは運転することを飽きさせず、もっと遠くへと足を伸ばしたくなるものだ。
と、こうした項目を並べて考えて見ると、やはりレヴォーグはすべて満たしている。今回はあくまで4代目、5代目を経験したのみだが、各代で足りなかった項目がバランスされているのがレヴォーグなのだ。
ここまで乗って、思い出した。2011年の冬、その年ニュルブルクリンク24時間レースで使用した、GVB型のインプレッサWRX STIのレーシングカーに試乗させてもらったことがある。走行前、SUBARU/STIチームの総監督、辰己英治さんに「来年も使うクルマなので壊さないでね」と念を押されてシートに乗り込んだ。
奇しくも雨が降って路面はウエット。辰己さんの言葉がヘルメットのなかをぐるぐると回り、ニュル号に乗れる喜びと、それを上まわる緊張のさなかで走り出した。だがコーナーをひとつクリアすると不思議と緊張はなくなり、ニュル号の走りを堪能できたのだ。降りた私は「こんなに乗りやすいんですね! レーシングカーってもっと人間に厳しいものだと思いました!」と辰己さんに伝えた。辰己さんは「ニュルは長い時間、過酷な路面を走るから、乗りやすくないと結果が出せない」というようなことをおっしゃったのを憶えている。
スバルはレーシングカーからしてこうなのだ。楽しく、そして人間に負担をかけない、これがGT性能の本質なのだろう、と思いつつ、最終到着地であるSUBARU本社を目指した。
ところが最後にオマケがある。東京に向かう夕暮れの高速上り車線といえば渋滞だ。ハッキリ言って渋滞はキライ、クルマの愉しさもへったくれもない。GT性能だって渋滞の前には……と思ったのだが、レヴォーグにはアイサイト・ツーリングアシストが付いている。
「ポチッ」。大げさでなく渋滞が苦痛じゃなくなるのだ。軽くステアリングに手を添えているだけで、ダラダラと進む車列の波に乗れる。じつはこの手の装備、イマドキは各メーカーが続々採用し、私も国産車を中心に試している。だが、すぐにオフにしてしまうものも多いのだ。その理由は、感覚に合わず、ブレーキのギクシャク感がストレスになったり、前車が動き出したときのスタートが微妙に遅くやたらと車線変更で前に入られたりするため。テストコースで優秀でも、やたらとブレーキの多い前走車や、強引な割り込みを狙うクルマもいる現実の公道では、実用的でなくなるものも多い。この点、長年の経験なのか、テストドライバーの味付けが優秀なのかは不明だが、レヴォーグは絶妙な加減速と車間距離で進んでくれる。
アイサイトといえば、ステレオカメラ方式云々で語られることが多いものの、ハッキリいってそんなことはどうでもいい。ミリ波だろうが単眼カメラだろうが、それらを併用しようが、大切なのは作動させたときの動きと、装備した上での価格だ。そういった意味において、レヴォーグの「それ」は本当に使えるものだった。
これからはGT性能の要件として、ドライバーをアシストするデバイスも加える必要があるだろう。そうなるとSUBARUが今後アイサイトをどのように進化させるのか、そこにも興味が沸いてきた。