空力性能を追求すると燃費性能が犠牲にされる
市販車をベースとしたレーシングカーでは、フロントバンパーにカナードやチンスポイラーなどのエアロパーツが追加されていたり、バンパーの形状そのものが市販車と異なっていたりすることも珍しくない。そうした形状が走りに有利とわかっているならば、なぜ最初からそのような形状にしたり、エアロパーツを追加したりしないのだろうか? フロントバンパーに注目して、その理由を考察してみたい。
モータースポーツ仕様に仕上げるにあたり、フロントバンパーに求められる性能というのは、おもにふたつある。ひとつは冷却性能で、ラジエターやインタークーラーに十分な走行風を導くために開口部が大きくなっていたりする。またブレーキを冷却するためのダクトが設けられていることもある。もうひとつは、ダウンフォースを生むこと。床下に空気を流し込むリップスポイラーの形状しかり、チンスポイラーやカナードの役割も同様だ。
しかし、クルマを下に押さえつけるためのダウンフォースを増すことは、基本的には空気抵抗(ドラッグ)の増大につながってしまう。整流効果によるリフトの抑制であればダウンフォース増とドラッグ減を両立することもあるが、通常は相反する要素といえる。燃費を重視するというトレンドにおいて、空気抵抗をむやみに増やすというのは考えにくい。