2015年のディーゼル不正がきっかけ
ズバリ、黒幕は独フォルクスワーゲングループ(VW)だ。もうすっかり忘れてしまった方も多いと思うが、今から4年前の2015年、VWはディーゼル車の排気ガスを抑制するソフトウエアに不正が見つかり、アメリカや欧州の当局による本格的な捜査が進んだ。
その影響でVWブランドは致命的な打撃を受け、世界市場で販売数が急減した。続く2016年、VWは一世一代の大勝負に出た。それが「EVシフト」というマーケティングだ。
中期経営計画テュギャザーで、VWグループ全体として一気にEV化を進めることを公言したのだ。しかも、数兆円規模でモーター、リチウムイオン二次電池、インバーターなどの制御装置の購買をかけ、VWグループ自らがEV市場を切り開く姿勢を世界に示した。
こうした電動部品の大量発注によって、ダイムラーとBMWもEVシフトの速度が少し速まったといえる。そこに、世界の自動車部品市場をリードするボッシュとコンチネンタルが連携し、結果的にジャーマン勢によるEV主導という図式となった。
逆に言えば昨今のEVブームは、電池技術などで革新的なブレイクスルーがあったから起こったワケではない。そのため、欧州の電池業界関係者らは「あくまでもVWグループのマーケティング戦略であり、彼らが描いている絵はあまりにも大きく、それが実現しないリスクも十分に考えるべきだ」と語る。