今や10段変速も登場し細かな制御が可能となった
オートマの場合は、4速ATが主流の以前なら、3速が直結で、4速がオーバードライブというのが多かった。すでに紹介しているようにオーバードライブは力の伝達という点では弱いので失速しやすく、本来は常用するものではなかった。だからシフトの横にオーバードライブボタンを付けて、それを押してオーバードライブをオフにしておくことで、通常は直結までの範囲で自動で変速し、オーバードライブについては任意で使えるようにしていた。
では、今のクルマからオーバードライブがなぜなくなってしまったかというと、制御の進化にある。簡単に言ってしまえば、昔のように、どんどんとシフトアップしてなにも考えずにオーバードライブに入り勝手に失速するというのがなくなり、ドライバーがアシストする必要もなくなったから。
最新のクルマでは現在何速にするのが最適なのかを高度に判断できるようになったので、ドライバーの判断でオーバードライブスイッチをオンオフしなくてもよくなったわけだ。そもそも8速や9速、10速といった多段ATが当たり前の昨今では、オーバードライブとなるギヤは一番上のひとつだけではなく、複数ある。たとえばレクサスLSは10速ATだが直結となるのは7速で、8速から10速の3段がオーバードライブとなっている。しかも10速の減速比はたったの0.598と以前では考えられないほど小さい。
こうなるとシフト横のボタンでオンオフなどという次元ではなく、逆を言えば高度な制御を駆使して完全自動で最適なギヤを選び続けられないようでは10速などという多段化は無理と言っていいだろう。ギヤがカバー範囲を越えて失速しそうになったら、車両が判断してさっと最適なシフトに変速。AT内部にもコンピュータは組み込まれていて、もはやボタンで切り替えるような制御の時代ではないのだ。