安全装備の充実が修復を難しくしている
最近、板金塗装工場に行って取材をすると、嘆きがよく聞かれるようになった。今まで、ボディリペアというと、叩いたり、パネルを交換したり。さらにパテで整形して塗装といった感じで、職人の世界だった。それがもう通用しないというのだ。
では、なにを嘆いているかというと、カンや経験などでは直してはいけない時代になったから。そこで見せてもらったのが、自動車メーカーからの修理指示書。中を見ると、事細かく直し方が書いてあるのだが、もちろん今まではそんなものはなかった。だから、今まで自分流でやってきた街場の板金塗装工場は嘆いていて、結局のところ対応はできないということになる。
なぜそんなマニュアルが登場したかというと、質の上がった塗装もあるが、大きくは安全性を確保するため。衝突軽減ボディは当たり前だし、センサーやせり上がるボンネットなど衝突時に作動する機能があちこちに付いている。つまり、所定の性能を確保されるように板金塗装をしないとダメで、修理後もし事故にあって作動しなかったら、板金したのが原因ということになりかねない。極端なことをいうと、「形、そして色を元を戻せばいい」という従来のボディリペアは通用しなくなる時代になってきている。
腕一本でやってきた職人さんが、センサーを取り揃えて取り付けをして、リセッティングするなどは簡単にできるわけもなく、最近では修理費の高騰から保険会社の工場囲い込みも進むばかりという。