納期が長いからといって生産規模を増やせないワケもある
最近の新型車では、納期を遅延させる傾向が強い。背景には2つの理由がある。
まずは需要に対して生産規模が小さいことだ。今は大半の車種が日本と海外の併売で、海外向けの生産に力を入れる車種もある。そのために日本のユーザーの納車が遅れやすい。また納期を短くするために生産設備を増強すると、将来的に需要が下がった時に、ムダが増えてしまう。減った時のことを考えて生産計画を立てるから、需要が伸びる発売直後は納期が遅延しやすい。
2つ目の理由は、受注開始の前倒しだ。今では納車を開始する「発売」の数カ月前から、販売店で注文を取るのが当たり前になった。そうすればメーカーは、新型車の人気度や売れ筋グレードが早期にわかり、生産を開始したら迅速に納車できる。その代わりユーザーは、実車を見ないで契約して、納車までには数カ月も待たされる。試乗して納得してから買えば、さらに待つ可能性もある。メーカーが自分の都合のために、顧客を待たせる売り方が定着した。
1)スバル・レヴォーグ
この納期の前倒しを極端に行ったのがレヴォーグだ。予約受注を2014年1月4日に開始したが、正式な発表は4月で、納車を本格的に開始したのは6月だった。つまり早期に注文を入れたユーザーは、約半年も待たされている。
販売店からは「納期が半年に伸びると、お客様が転勤されるなど、環境が変わることも多い。電話や訪問で、定期的に様子をうかがう必要がある。下取り車の査定も、納期が近づいた時に改めて行わねばならない。納期が伸びるとお客様に迷惑がかかり、販売店の手間も増える」という意見が聞かれた。
なお現在のレヴォーグの登録台数は、1カ月平均で1000台少々に落ち着いている。納期も1.5か月前後と短くなった。
2)トヨタ・アルファード&ヴェルファイア
アルファード&ヴェルファイアは、人気の高いLサイズミニバンとあって、2015年の発売直後には納期が6〜8カ月に伸びた。
その後も売れ行きは好調だ。2019年上半期(1〜6月)の登録台数は、1か月平均だとアルファードが5878台、ヴェルファイアは3460台であった。両姉妹車を合計すれば1か月当たり9338台だから、トヨタ・アクアの1万58台に迫る。アルファード&ヴェルファイアの売れ筋価格帯が380〜500万円に達して、発売から4年以上を経過することも考えると人気はかなり根強い。
今でも売れ筋の車種としては納期が長めで、販売店では「4カ月は見て欲しい」という。