パワーは1分間当たりの総出力トルク
一方、パワーというのは、時間単位で行われる仕事量の単位。もともとは蒸気機関の発明で有名なワットの考案で、炭鉱の排水作業を行っていた馬の能力=75㎏の重さを1秒間に1m引き上げるのに必要な動力を「1馬力」とした。この馬力は、「軸トルク×回転数÷716」という公式で求められるので、回転数が高いエンジンほど馬力は高くなる。別の言い方をすれば、パワー(馬力)とは、1分間当たりの総出力トルクのことなので、同じ回転数でも、排気量の大きいエンジン=トルクの大きいエンジンほど、パワーも大きい。
また、同じ排気量、同じ回転数でも、シリンダーの数が多ければ、1分間当たりの爆発回数が多くなるので、4気筒よりは6気筒、6気筒よりは8気筒、8気筒よりは12気筒の方がパワーは出せる(反面、1気筒あたりの排気量が多いほうが、1回の爆発で得られるトルクは大きくなる)。
さらに同じ排気量でも、燃焼室が小さいロングストロークタイプのエンジンはトルク型になるし、ショートストロークタイプのエンジンは高回転型のエンジンになる。簡単にいうとエンジンの力強さはトルク、スピードを出せる能力はパワーで決まると思えばいい。
ドライバビリティに優れ、乗りやすくて、高効率なエンジンはトルク型になるが、スムースさや滑らかさはマルチシリンダーのほうが有利だし、モータースポーツのようにタイムを競う場合は、仕事量に優れるパワー型エンジンが欲しい。
フィーリング面でも、少々低速トルクを犠牲にしても、高回転で伸びのあるエンジンのほうが気持ちがいいので、排気量と回転数、気筒数をどうするのか、その加減が難しいところ。力強くて、気持ちがよくて、スピードが出せる夢のエンジンの実現がなかなか容易なことではないのは、こうした事情があるからなのだ。