敏腕経営者が死去! かつての勢いを失ったクライスラーに足りないものとは (3/3ページ)

アメ車ブランドの勢いを感じられないのが残念

 アメリカンブランドにしてはかなり硬い足まわりや、ダッシュボードはほとんどビスを使わず、ただはめこまれているだけという思い切ったコストダウンなど、とにかく驚かされることも多く、クライスラーの本気のようなものを感じた。

 オーディオをレベルアップしようと、専門ショップへ取り付けに出したら、若いメカニックが配線で苦労していたときに、社長さんが配線を見て「懐かしいなあ、昔のクライスラー車(1960年代)のころと変わってないよ。これじゃ若い人はわからないよな」と言っていたのをいまもよく覚えている。

 夏にエアコンの温度調節をマックスレベルにしておくと白い冷気が出てくるほど効きがよく、トルク志向の2リッター直4エンジンは4万km走ったら、やっとエンジンに“アタリ”がついてきたなど、アメリカ車らしい“茶目っ気”もたっぷりあった愛らしいクルマであった。

 それでもアメリカ車に乗るということで、故障の頻発は覚悟していたのだが、電動ファンの作動に関するセンサーに水が入って機能せずに、1度オーバーヒートを起こしただけであった。

 現状ではFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)となり、FCAとなった直後はクライスラー系ブランド(ダッジ、クライスラー)車も、フィアット車のメカニズムを共用した小型車がラインアップされたりしたが、今では、ミニバンやピックアップトラック、V8 HEMIエンジンも搭載する、ベタベタな大型車となるクライスラー300やダッジ・チャレンジャー&チャージャーなど、かなりラインアップが絞り込まれ、絵にかいたようなアメリカンブランドらしい車種構成となり、現状ではほぼ北米限定ブランドのようになっている。

 クライスラーだけでなく、フォードは北米市場での乗用車販売を原則やめるし、GM(ゼネラルモーターズ)も小型トラック(SUVも含む)へのシフトを強めており、さらに全般的に北米市場をメインに意識した“内向き”モデルが目立っている。

 日本車が北米市場に大量に流れ込んできたときに、日本車に対抗しようとグローバル市場を意識しながら新車開発を続け、クライスラーの危機的状況を脱したアイアコッカ氏のような意気込みは、いまのアメリカンブランドからはなかなか感じられないのが、アメリカ車好きとしてはなんとも寂しいところである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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