メーカーが採用するシステムによって作動条件も異なる
2020年から新車に標準装着することが義務づけられている衝突被害軽減ブレーキ。俗に「自動ブレーキ」と呼ばれていたこともあり、いざというときは自動的にブレーキが働き衝突を回避してくれるシステム、と勘違いしている人も多いようだが、これはあくまでドライバーをアシストしてくれるシステムで「シチュエーションによっては、作動しない恐れがある」と国土交通省からも注意喚起が出されている。
現状ではメーカーによって、ミリ波レーダーやステレオカメラ、赤外線レーザー等、使っているセンサーにも違いがあり、それらを組み合わせて使っているシステムもある。そのため、車両だけでなく、歩行者や自転車まで対応するものあればそうでないものもあるし、昼間はバッチリだが夜間は苦手なタイプなどといろいろあり、作動する走行速度にも違いがあるので、過信するのは禁物。
まずは愛車の衝突被害軽減ブレーキの特性をよく理解しておくことが大切だ。では具体的にどういう場合に作動しないことがあるのか?
■スバル・プリクラッシュブレーキ
「アイサイト」(ステレオカメラ式)で衝突被害軽減ブレーキの先鞭をつけたスバルの「プリクラッシュブレーキ」を例に、衝突被害軽減ブレーキが作動しないケースを見てみよう。
・追突回避ができない場合
以下3つの場合は追突回避ができない場合がある。
・先行車との速度差が30km/hより大きい場合
・前方に他の車両が急に割り込んできた時や、人が急に飛び出してきた時
・雨や雪などで路面の状況が悪いとき、あるいは霧や大雨、逆光などで視界が悪いとき
また、動物や身長1m以下の小さな子供などは認識しにくいため、システムが作動しない可能性が高い。
・システムが作動しない場合
以下の条件では、システムの制御対象とされない、また正確な距離を算出できないことがあり、システムが作動しない場合がある。
・夜間やトンネルなどの暗い場所で、テールランプの点灯していない先行車
・先行車が特殊な車両や、荷台の低い低床トレーラー、空積キャリアカー
・横向きの車両、対向車両、バックしてくる車両、さらにフェンスや壁、集団の歩行者
・ドライバーの意思が優先される場合
また以下のようにドライバーの意思が優先されるケースもある。
・ドライバーがブレーキやハンドルの操作をしていると、回避操作をしていると判断され、自動ブレーキが作動しない場合がある。
・作動時にアクセル操作をしてもプリクラッシュブレーキを継続するが、アクセルを全開に踏み込むとプリクラッシュブレーキを解除する。
ステレオカメラ式のアイサイトは、フロントガラスへの撥水剤のコーティングがNGだったり、いくつかの注意事項も守る必要がある。
カメラ方式のメリットは、画像により対象物を認識しているため、素材にかかわらず障害物を検知できることが挙げられる。また、アイサイトの場合はステレオカメラを使用しているため、単眼カメラよりもさらに距離の計測が正確に行えるという点もアドバンテージだろう。
デメリットは、たとえば悪天候時や暗い場所など、人間の目と同じように障害物が見えない場合は検知できない可能性があるということだ。