EVは走らせるだけではもったいない
しかしEVの価値は、クルマとしてだけでなく、社会生活とより密着したエネルギー管理に目が向けられるべきだと思う。そこがまた、エンジン車にはできないEVならではの特徴になるからだ。具体的には、ヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH)や、ヴァーチャル・パワー・プラント(VPP)といった、電力需給との関係だ。
日産と三菱は、東日本大震災の教訓から、EVが災害時の重要な電力供給源になることを学んだ。そして日産は、電気事業を手掛けるニチコンと、VtoHの機器の開発と販売に乗り出した。三菱自も、EVから電気を取り出し100Vの家電製品を利用できるパワーボックスを開発し、1500Wまでの電力供給をできるようにした。またデンソーが、プリウスPHVや他社のEVとPHEVから電力を家庭へ供給するV2H充放電器を開発している。
EVを、生活で使える蓄電池に応用する発想からさらに拡張し、日産は地域の電力需要を効率化、平準化するスマートグリッドのVPPの研究を開始し、三菱も実証実験をはじめている。
運輸部門における環境対応として排ガスゼロのEV普及が求められるのとあわせ、その電力を無駄なく活用し、社会全般でエネルギー消費を減らしながら快適に暮らせるようにすることがEV最大の使命であり、単にエンジン車やハイブリッド車の代替で終わらせては、その役割の半分にも満たない存在で終わってしまうことになる。さらに、EVで使い終えたリチウムイオンバッテリーの再利用も日産は視野に入れている。
総合的なEVの価値という視点に立てば、日産や三菱の取り組みはもっと世界的に注目されるべきであり、単に販売台数の多少で勝ち負けを決めることの意味は薄い。ただ、そうした社会貢献を推進するうえで、販売台数を伸ばすこともまた重要ではある。