N-BOXよりもエンジンのフィーリングは良好
ところで、新型タントはここ8年に渡り、スーパーハイト系軽自動車のベストセラー、国産乗用車販売台数No.1のホンダN-BOXと熾烈な争いを繰り広げているが、とくにターボモデル同士で比較すると、新型タントが優位。その理由は、N-BOXのターボエンジンは、アクセルの踏み始めにゴロゴロする振動が発生。それがペダルなどに伝わり、ボクのように不快に感じる人もいるはずだからである。
しかし、新型タントのトルクアップしたターボエンジンは極めてスムースで振動がほとんどなく、高回転まで回しても不快な振動、ノイズと無縁。1L以上のNAエンジンを思わせる、じつに洗練されてドライバビリティにも優れた軽自動車用ターボエンジンなのだ。新型タント同士では、14インチタイヤより、カスタムRSの15インチタイヤのほうが、ロードノイズが小さい点も褒められる。
また、N-BOXは乗り心地が“意外なほど”硬めで、しかしゆったりとしたストローク感あるタッチと、比較的深いロール量を示す。その点、前後ダンパーに低フリクションタイプをおごる新型タントRSは、より上質なしっとり感さえあるフラットライドに徹し、カーブなどでの乗員の頭部(視線)の揺すられ感は最小限。つまり、長時間、長距離の移動で疲れにくいのは、間違いなく新型タントのほうと思える。
直接的ライバルのN-BOXが今でも新型タントをリードしている部分を探せば、まずはイメージ。タントにある子育てカー的なイメージとは違い、より万人向けのキャラクターだ。そして依然、圧倒的な後席ニースペースの余裕と、センタータンクレイアウトを生かした後席後端位置での足引き性(シート下は空洞)、それがもたらす立ち上がり性の良さ、約35~115km/hの作動とはいえ、全グレードにホンダセンシングに含まれるACCを装備しているところなどだろう(新型N-WGNは渋滞追従型のACCを装備しているので、今後、N-BOXも渋滞追従型ACCになる可能性あり)。
そんな新型タントは、価格アップを最上限に抑えつつも、全車に世界最小のステレオカメラによる15種類もの進化した先進安全支援装備=スマートアシスト、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドライトなどを標準装備。基本性能、走行性能を含め、日本を代表する軽自動車メーカー、軽自動車にいち早く先進安全支援装備を搭載したダイハツらしい、ユーザーに寄り添う見識と“打倒N-BOX!”の意気込みを強く感じさせてくれる、快作の新型である。
お薦めは、一家に一台のファーストカー、ロングドライブの機会も多いというなら、迷うことなくXターボ、またはカスタムRSのターボモデルである。理由は渋滞追従型のACCが装備され、高速走行の実燃費はエンジンを低回転でまかなえるターボのほうが伸びる傾向にあるのと、じつはターボとNAモデルとの価格差がそう大きくないからだ。