NAのモデルでも上質な走りを披露する
さて、まず試乗したのは14インチタイヤを履く標準車のNAモデル。ダイハツのNAエンジンは以前からトルキーで、街乗りでは十二分なトルク、加速力を発揮してくれたが、加速度15%UPというより、スムースさがレベルアップした印象だ。登坂路ではさすがにターボのようにスイスイとは登らず、エンジン回転を高める必要に迫られるものの、平たんな道なら「これで十分」と思える、軽自動車のNAエンジンモデルとして、上質かつ最上レベルの動力性能、走りやすさを体感させてくれたのだ。
しかし、もっとも感動したのは乗り心地。スーパーハイト系軽自動車は全高・重心が高く、転倒防止のために足まわりを硬めに設定しがちだが、新型タントはしなやかで“しっとり”としたフラットな乗り心地を、カーブやレーンチェンジ時の前後左右の姿勢変化最小限で実現しているのだから、もう、びっくり。これほど乗り心地に上質なしっとり感がある軽自動車はほかにないと思えたりするほどだ。下手なコンパクトカー真っ青である。
セミベンチタイプにこだわった前席の掛け心地は素晴らしい! のひと言だ。お尻がふんわり沈み込む座面後端の分厚いクッション感はもう絶妙(カスタムのシートのほうがより明確)で、カーブなどで頭と上半身が揺すられにくく、結果として長時間運転の疲れにくさに直結。それはDNGAの威力もあるのだが、シートの体重で心地良くサポートしてくれるシートのできの良さも寄与しているはずである。
ただし、ちょっと残念なこともある。それはアウトホイールタイプの液晶メーター。標準車、カスタムともにNAモデルはドライバーの正面となる部分が真っ黒。なんの表示もされない。じつはそこ、標準車/カスタムのターボモデル限定で装備されるACC(アダプティブクルーズコントロール)の表示部分になっていて、ACCが未装備だと不自然な(寂しい)見栄えになってしまう。左側にオフセットされている速度表示を右側に移動させるなどの配慮がほしいと思える。
ちなみに、液晶メーター左端の主に回転計を表示する部分は、エアコンのダイヤル操作、温度設定を行うと、設定温度を表示。視線をエアコン操作パネルに落とすことなく確認できるので、安全かつ便利だ。
一方、ターボエンジンを搭載し15インチタイヤを履くカスタムRSグレードは、完璧なスーパーハイト系軽自動車と言えそうだ。つまり、標準車と同じ超実用性に加え、高速走行も坂道の登坂も余裕でこなす動力性能、エンジン回転をより低くキープすることで得られる車内の静かさ、ステアリングのフリクションほぼ皆無のスムースさを備え、高速道路での渋滞も怖くない、渋滞追従型ACCを完備しているからだ。
これで車速コントロールがしやすくなり、下手にブレーキを踏まれるよりスムースな減速が可能になる(乗員がゆすられにくくなる)とともに、ブレーキの負担も軽減できるパドルシフトがあれば、個人的にはさらにうれしいのだが、タントは伝統的にパドルシフトを採用しないことになっているという(泣)。ライバル車のカスタムグレードにはあったりするんですけどね。