等長等爆化による改良効果はNAの方が大きかったという声も!
2)インプレッサWRX-NA(2000~2002年)
2代目インプレッサWRXは、デビュー当初はセダンが全車WRXに昇格。ターボを積む「WRX-NB」と、NAを積む「WRX-NA」の2グレードを設定し、歴代で唯一となる「NAのWRX」が発売されていた。エンジンは初代SRX時代と同じ155馬力仕様で、軽量初代ベースのSRXよりやや重くなったとはいえ車重はAT車でも1300kg。NAのWRXと呼ぶに相応しい動力性能を発揮していた。
GD系の拡幅・強化されたボディに搭載されることで、SRX時代と比較するとシャシー性能は劇的に向上。とてもバランスの良いNAのスポーツセダンとして、今からでも再評価に値する力作として、しっかり思い出しておきたい。
2代目WRXのデビュー直後は、少し遅れて発売されるSTIバージョン待ちという人も多く、NA仕様はほぼ見向きもされなかったことが惜しまれる。フェイスリフトで涙目顔となるアプライドC型以降は消滅し、完全に忘れ去られた。
3)4代目レガシィ2.0Rシリーズ(2003年~)
4代目レガシィで実施されたエンジンの等長等爆化による改良効果は、じつはターボよりもNAのほうが大きかったと言われる。そこでレガシィ初の本格NAスポーツグレード2.0Rが誕生した。SRX、WRX-NAと連続してNAスポーツが商売的に失敗し、その傷もまだ癒えぬうちから、3度目の正直と言わんばかりに入魂開発されている。
まずは、エンジンがじつに素晴らしい。NAらしい中低速トルクを維持したまま大幅な高回転化と高出力化に成功。真円度を高めたライナーとシリンダーブロックの密着性が向上し、ピストンの振動は大幅に減少している。それまでは吸気側のみに採用していた可変バルブタイミング機構AVCSの採用を拡大し、MT向けは名実ともにNAスポーツユニットと呼べる190馬力を発生。ガソリンはハイオク指定となる。
そもそも水平対向エンジンは、いわゆるこもり音につながる低次基本次数が小さいことがメリットとして挙げられ、大容量の吸気キャンバーが設置される独自のレイアウトを活かすことで、濁りのない軽快でリニアなサウンドが生み出されるようになるのだが、当時のエンジニアがとくに強く意識したのは、車内のドライバーに聴かせる音作り。
大容量の吸気キャンバーが設置される独自のレイアウトを活かしたサウンド作りがなされた結果、アクセルを踏み込んだ際の吸気音は、今乗っても痛快の極みだ。ターボや6気筒の影に隠れ、中古車市場でも安値で推移していることにも注目したい。
これほどの力作2.0Rも販売は振るわず、これ以降、レガシィとインプレッサ系に本気のNAスポーツグレードは設定されなくなってしまった。せっかく秀逸なNAスポーツが過去に3台も設定されたというのに、発売されていた当時はその価値に気がつかず、スルーし続けた自分の見る目のなさを恥じるばかり。
NAスポーツの系譜はBRZが受け継いでいるともいえ、BRZに乗ると、過去のNAスポーツに投じたスバルの情念が感じられるのは、気のせいではないはずだ。