歴代の走り好きに愛されていたのがGTグレード
セダンにGTグレードが初めて設定されたのは、最後のFR方式となった4代目となる。以降FFとなった5代目、6代目、7代目、8代目(後期のみ)まで設定されていた。スポーツツインカムを搭載するカローラシリーズといえばレビンシリーズが圧倒的な存在感を見せるのだが、セダンGTも販売台数こそ少ないながらも根強い人気を持っていた。(写真は4代目 1500GL)
昔筆者の知り合いだった取り扱いディーラーのメカニックが、6代目のセダンGTに乗っていたのだが、GTエンブレムをあえてはずし、ファミリーグレード風に見た目を“デチューン”して乗っていた。「ファミリーグレードと見せかけておきながら、中身はGTという羊の皮を被った狼感を強調した」と語ってくれた。
一方で、7代目セダンの1.3リッターエンジンを搭載した3速AT仕様の廉価グレードに乗っていた知人はたまたま、カローラにしては大径タイヤに真っ赤なアルミホイールを譲り受け、タイヤを履き替えて乗っていたら、ボディカラーがGTで好まれていた紺系だったこともあり、GTと間違われて三菱ランサーエボリューションやスバル・インプレッサWRXに追っかけられたという話も聞いたことがある。
7代目が“やりすぎカローラ”と呼ばれていたほど、内外装の質感がかなり高かったのだが、その次の8代目はコスト削減を優先に開発されたこともあり、見劣りが激しく販売の勢いもいまひとつだった。そこでマイナーチェンジでは質感の大幅向上をはかるとともに、マイナーチェンジ前にはいったん廃止となったGTに6速MTを設定して復活させている。それだけセダンGTはカローラセダンのある種シンボリック的な存在でもあったのだ。
もしかしたら、アウディS3の上にRS3があるような感じで、1.2リッターW×Bより、さらなる専用チューンを施した、ハイパフォーマンスモデルの登場予定があるので、そのモデルにGTと名乗らせようとしている……というのは少々考えすぎのようだが、実現したら3ナンバーサイズとなった、新世代のカローラの方向性をより強調できるかもしれない。
いずれにしろ、1.2リッターターボを専用搭載し、6速MTのみの設定にしているのだから、W×Bとは異なるグレード名を与えたほうが良かったのではないかと考える。