軟弱者が乗ればクルマが泣く! レーシングドライバーが語る全開走行でこそ真価が発揮されるモデルとは (1/2ページ)

走行性能や安全性、実用性を兼ね備えたモデルは雲の上の存在に

 トヨタのGR「スープラ」復活はスポーツカー好きにとって胸躍らせる出来事となった。だがこんなご時世、その性能を引き出すにはサーキットへ足を運ぶしかない。しかし多くのユーザーの場合、購入前にサーキットで試乗テストし性能に納得してから購入するなんてのは無理な話だ。

 そこで我々評価ドライバーのレポートを参考にしてもらうのが有効になるのだが、プロの評価ドライバーである我々でさえサーキットで全開テストさせてもらえる機会は激減している。メーカーとしては自信を持って発売しているのだから余計な評価は無用という姿勢に変化してきている。

 以前は違った。例えば月刊ビデオ媒体「ベストモータリング(通称ベスモ)」でキャスターを努めていたころは筑波サーキットでの限界走行テスト&タイムアタックそして競合車と直接競わせる「バトル」企画が人気を博し、メーカーのエンジニアの中にもベスモ信奉者が多くいて自車の性能を最大限引き出させようと積極的に協力してくれたものだ。

 それが近年ではサーキットテストというと「タイヤやブレーキ代の負担ができない」とか「速さは試さないでもらいたい」などの理由で貸し出しを拒否されるケースのほうが多くなってしまった。サーキットテストされなければ「多少軟弱なクルマをつくっても大丈夫」とコストダウンに傾注してしまうこととなるのを心配していたが、実際危惧した通りとなってきている。

 ざっと見渡して、サーキット走行テストでも高い性能を示し、安全安心かつ実用性も備えた国産車はほとんど見当たらなくなった。

 以前にも述べた日産GT-Rニスモくらいか。それも購入費用が2500万円近くになったと聞き、もはや手の届かない存在になってしまったようだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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