どうせ減るから……は問題あり? クルマの「タイヤ空気圧」を多めに入れる弊害とは (2/2ページ)

高すぎる空気圧は走行性能に支障をきたす

 だから空気圧をチェックするのが面倒だからといって「多めに入れておけばいいんじゃないの」と考えてしまうのは間違いだ。指定値が240kPaのところ250kPaにしたというくらいでは、機械ごとの誤差もあるだろうから問題は起きてこないだろうが、極端に空気圧を高くしてしまうと走行性能にネガが生まれてくる。具体的には空気圧が高くなると正面から見てタイヤが尖ってしまい接地面積が減ってくる。

 こうなるとグリップも落ちてしまうし、編摩耗の原因にもなる。逆に低すぎるとタイヤがホイールから外れてしまうこともある。空気圧は高すぎても低すぎてもいいことはない。適正値の範囲にすることが重要だ。

 さて、自動車メーカーの指定値というのは「冷間」といってタイヤが冷えた状態での空気圧だが、サーキット走行を前提にセッティングに利用する際には、タイヤが温まって空気圧が高くなった状態(温間)で最適値になるように微妙に合わせていくこともある。

 その場合は、必ずしもメーカーの指定値通りにするというわけではないが、それでも極端な高圧・低圧というのはあり得ない。ちなみに、日本のタイヤ規格(JATMA)に則っているSTD(標準)タイヤの場合、セッティング幅として使える空気圧は、おおむね180~250kPaとされている。ただし、クルマとの相性ではなく、タイヤの機能として推奨できる範囲という意味なので誤解なきよう。

 一方で、XL(エクストラロード)規格といって、より高い空気圧に適応したタイヤもある。XL規格のタイヤは内部構造が強化されているもので、STDよりも高い負荷性能を持っている。ただし、XL規格でSTDと同じ負荷(ロードインデックス)を実現するには、より多めに空気を入れる必要がある。つまり空気圧が高めになるというわけだ。

 たとえば215/45R17サイズのSTDタイヤで210kPaが指定空気圧の場合、同サイズのままXL規格の銘柄に変更すると適正な空気圧は230kPaになるといった具合だ。ちなみに、XL規格では200~290kPaの空気圧が推奨範囲であると捉えておきたい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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