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クラシックカーの味と走りがタイヤで蘇った! ヨコハマ「G.T.SPECIAL CLASSIC」を履いた驚きの効果とは (1/2ページ)

クラシックカーの味と走りがタイヤで蘇った! ヨコハマ「G.T.SPECIAL CLASSIC」を履いた驚きの効果とは

ルックスに惚れて買ったクルマ……タイヤの見た目もこだわりたい

「ゼロヨン加速16.8秒 最高速185km/h」などという数値や「DOHC」「5速マニュアル」という「ハイパフォーマンスを謳う」文字が、1960年代後半のカタログや自動車雑誌に踊っていた時代があった。もちろん現代ではエコが自慢のハイブリッドカーでさえその時代のクルマを軽く上まわっているので、恥ずかしくてカタログでは謳えないほどのスペックですが……。それでも当時、世界のモーターショーが開催されるたびに発表されるスーパーカーやコンセプトカーのスペックやスタイリングに、子供から大人まで心踊らせたものでした。その後、自動車が高性能になり、道路も舗装が広がり、高速道路も拡充し始めた時代に呼応するために登場したのが、新しいラジアル構造で作られたヨコハマタイヤ「G.T.SPECIAL」でした。

 ボクは、日本の高度成長期であり、自動車の高性能化が急速に発展を遂げた時代に育ったせいなのか刷り込まれたのかは定かではありませんが、これまで愛車としてエンスー系のクルマを何台か乗り継いできました。1972年式のVWビートル1200に始まり、64年式のホンダS600クーペ、日本最終年型だった69年ポルシェ912、90年のランチア・デルタ16Vなどです。そして今回手に入れたのが、1974年型のFIAT 124 Sport Coupeです。決して走りがすごいわけでもないし、スペック的に優れているわけではありませんが、今回の購入動機はこれまでとは違い、そのスタイリングにありました。

 じつは今までで一番衝撃を受け、かつ好きなクルマのデザインが、発売されることのなかったいすゞベレットMX1600IIというクルマです。1970年に二代目のショーカーとして登場したクルマですが、デザインしたのはカロッツェリア・ギアなどで活躍したデザイナーで、デ・トマソ・パンテーラなどを手掛けたトム・チャーダです。117クーペやベレットGT-Rに採用された1600ccのDOHC4気筒エンジンをミッドシップに搭載した画期的マシンの二代目で、初代は生産化をまったく考慮に入れてなかったために単なるショーカーデザインのクルマでした。二代目となるにあたり、発売を前提に冷却や保安部品などをより現実的にした結果、フロント部分のデザインを一新しヘッドライトは丸目四灯となり、グリルが設けられラジエターが設置されたのです。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、この大好きなショーカーに終わってしまったいすゞベレットMX1600IIをどこか思わせるFIAT 124 Sport Coupeが好きでした。ボンネットの前端部分よりも丸目四灯ヘッドライトが奥まったデザインや、ボクシーなエクステリアデザイン、そして決してハイスペックではないものの当時としては珍しかったDOHCエンジンの採用、さらには6連メーターなどを実現しているこのクルマを見つけたときにすぐに購買することとなりました。

 手もとにやってきたFIAT 124 Sport Coupeは、一見するとまとまった感じでした。このクルマが履いていたのは、雰囲気のある15インチのイタリア・クロモドラ風ホイールで、タイヤは現代の55扁平エコタイヤを装着していました。クルマは今から45年前の旧いクルマですから、ボディや足まわりがヘタっているのは当たり前で、このタイヤとホイールは明らかにオーバースペックでした。しかも当たり前ですが、70年代のクルマにしてはあまりに「ヤル気」が前面に出てしまい雰囲気が似つかわしくありません。

 そこで45年前のクルマを当時に近い雰囲気に戻したいと思い、あえてスチールホイールを探し、80扁平のタイヤを履きたいと思い至ったのです。ということで行き着いたのが、ご覧のような組み合わせとなりました。ホイールは当時のアルファロメオを思わせるような雰囲気のあるモノをゲットできました。

 さて早速、スチールホイールにADVAN以前のヨコハマゴムのスポーツタイヤの象徴だったG.T. SPECIALを見事に復刻したG.T.SPECIAL CLASSICを組み合わせてみました。とはいえ当時のG.T.SPECIALを含むスポーティタイヤは、ようやくラジアル構造になったばかりで全部が硬かった印象があります。タイヤのサイドウォール部分やトレッド部分などのタイヤ構造、さらにタイヤ表面のコンパウンドと言われるゴムの材質部分などです。

 G.T.SPECIAL CLASSICと新たなスチールホイールの走りはもちろん気になるのですが、まずは肝心の見た目の第一印象はどうでしょう。ボクが個人的に言わせていただけると、誰への忖度もなしに「カッコいい!」の一言です。なんといってもフェンダーとタイヤにあったむなしく感じる空間を55から80扁平となったことで埋めることができました。これにより間が抜けた見た目がピシッとし、70年代当時の雰囲気を取り戻したように思えます。また何よりも、G.T.SPECIAL CLASSICのトレッドデザインがちゃんと当時の雰囲気を高めてくれているのは嬉しい限りです。

 仕事柄、ボクは各地で行われているクラシックカーのイベントやクラシックカーラリーに足を運びますが、フェラーリやポルシェに乗っている比較的お金にお余裕のあるクラシックオーナーでさえも「お爺ちゃんのクラシックカーの足に現在のスニーカーを履かせている」チグハグなクルマが少なくありません。オリジナルのスタイリングやスペックには非常にこだわっているのに、タイヤだけは現代のタイヤだったり、サイズさえ合っていればいいという考えのオーナーが少なくないのです。これはじつに悲しい! 当時の雰囲気のブロックパターンでいながら、現代技術を盛り込んでいるからこそ、旧いクルマの走りや性能はもちろんのこと、当時のままの佇まいを見事に再現してくれるのに、です。

 さてタイヤとホイールだけを換えただけで、見違えるような印象になったFIAT 124 Sport Coupeを早速、高速道路を含めた街中とワインディングへと連れ出してみました。首都高速から神奈川県を抜けて千葉方面へ、という私たち自動車雑誌のルーティンのようないつもの試乗会撮影に近いコースを辿ってみたのです。現代のクルマで走り慣れた道を、自分のクラシックカーで走ってみるとどんな印象になるのかを知りたかったからです。

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