絶対性能の向上はもちろん懐の広さが増した
サーキット試乗は従来モデル(2017モデル)との比較試乗もできたが、2年前は「凄い!!」と思っていた従来モデルが色あせてしまうのほど進化幅だ。
まず、クルマがひとまわり軽く・小さくなったかのような身のこなしの軽さを感じた。2020モデルは従来モデルより20kg軽量化されているが、S字のような切り返しではまるで100kgくらい軽くなったのかと思ったくらいクルマの動きにダルさがない。結果としてドライバーの細かな操作にクルマがより忠実に反応してくれるので、一体感も高まっている。このあたりはカーボンルーフ、カーボンフードなど原理原則に基づいて行なわれた軽量化が数値以上の効いているはず。
ハンドリングは従来モデルよりも回頭性のアップやアンダーステアの低減、更にトラクション性能のアップを感じた。実際にVDC-Rモードで走らせてみると、明らかに従来モデルより2020モデルのほうが制御の介入が少ない。さまざまな要因があると思うが、そのなかでもタイヤの進化が大きいだろう。
パワートレインも新ターボのレスポンスの良さが一般道以上に効いていて、アクセルを踏んだ際のタメがなくなっているのと、従来モデルだと2速に落としたくなるコーナーでも2020モデルなら3速のままでOK……と言うくらいの過渡領域での力強さとフレキシブルさが備わっていた。
また、カーボンセラミックブレーキは絶対的な制動力の高さはもちろん、何周走ってもまったく変化のないタッチとフィーリングでドライバーのほうが先にヘタってしまうくらい。一度味わってしまうと、あれだけ凄いと思っていたはずの従来モデルのスチールブレーキが不安に感じてしまうほどだった。
そろそろ結論に行こう。2020モデルの進化は単純な速さのレベルアップに留まらず、その性能を誰でもラクに安心して引き出せる性能を手に入れた。従来モデルはチューニングカーらしい荒々しさが良くも悪くも“個性”の一つだったが、2020モデルは走りの方向性が基準車の45度線上に収まったように感じた。
田村さんは常日頃「GT-Rは『GT』と『R』のバランスが重要」と語っていたが、2020モデルのGT-R NISMOは2007年以来進化・熟成を重ねてきたR35 GT-Rの“ファイナルアンサー”と言ってもいいのかもしれない。