待望のディーゼルが満を持して登場
見た瞬間にハッとさせられるジュリアは、斬新で美しくクールなイタリアンデザインを内外装に持つアルファロメオを代表するセダンの旗頭だ。インパネから流れて行く造形美はシート、ステアリングにメーター類の配列と装飾、各種スイッチ類にも拘りがあり、素材の肌触りに香りも含めて、そのお洒落度は独自の世界観を放つ。
それは走行性能に関しても同様で、駆動方式に関わらず切れ味鋭いフットワークと安定性でバランスさせている。走りに拘る立場から言うと、「走る・曲る・止まる」さらにスポーツハンドリングという意味では、BMWと並んで(BMWを意識していることがヒシヒシと感じられる)“世界をリードする存在”である、と認識している。
それはパワーユニットに関しても同様で、絶対的な性能の高さとともに、アクセルに対するレスポンスや、サウンドも回転に応じた盛り上げ方、抑揚感の演出、音のチューニングにかけても魅せるセンスが光る。
そして、それに輪をかける様に優れたディーゼルが誕生した。個人的に現在、日常のアシとして選ぶなら、パワーユニットはハイブリッドかディーゼルしか考えられない。アルファではディーゼルユニットの名称にスポーツをつけて“スポーツディーゼル”と呼ぶ。走ればなるほど、実用性重視のディーゼルエンジンとはひと味もふた味も違う瞬発力とサウンドを有している。
試乗はセダンのジュリアとSUVのステルビオで、ともに2.2Lターボディーゼルを搭載。本来はそれぞれが主役を張れる存在だが、上陸したタイミングから一同に介して紹介する。
ジュリアは2.2ターボディーゼルのスーパー。後輪駆動のこれはまず、ゼロスタートからの出足の軽快さがいい。世界の主流とも言える2Lディーゼルよりも、200cc排気量が大きい分のアドバンテージが、試乗コースの箱根ターンパイクの急坂に向けて、低回転域はもちろん、とくに登坂する途中で一端速度を落としてからの中間加速でも、アクセルの動きに直結したダイレクトで力漲るトルクが、高回転まで回す必要なく、モリモリと沸き上がるターボトルクが鋭い加速力を生み出す。
エンジンスペックは190馬力/3500rpm、450N・m/1750rpm。これ、マツダの2.2Lディーゼルと同レベルである。ただしジュリアのほうがパワーで500rpm、トルクも250rpm低い回転で最高出力、最大トルクを発生し、それを8速ATと組み合せている事が大きい!!
ゼロスタート時のローギヤードなギヤ比設定。高速巡航において燃費と静粛性の大きく貢献するハイギヤードな設定がエンジン特性を存分に引き出す。ディーゼルらしい燃焼音を感じさせるのはアイドリング時だ。が、走り出せば風に流され、同時に遮音性の高さも含めてガソリンユニットとも違う優しいトーンが耳に届く。
走行モードはd(ダイナミック)、n(ナチュラル)と効率的なa(アドバンスドエフィシェンシー)の三択。自動的にnが選ばれているが、結論から言うと、nが文字通り最も自然で素直な操縦感覚を生む。
個人的に通常どのクルマに乗ってもまずは通常モード(n)とエコモード(a)を選び、アクセルに対するスロットルの開き方を探ると、アルファのそれは三つのモードの個性がより明確に表れるようにそれぞれの違いが明確な差として起る。
aは出力特性がなだらかになるようにかなり絞られていて、市街地走行は自然で滑らかな操縦感覚が、街の流れに溶け込む。だが今日は箱根ターンパイクが舞台。急勾配な登りに、コーナーのアールが大きいステージだけに平均車速は高い。一定速度で走行していれば十分なのだが、登坂路だけにコーナー進入で減速してからの再加速は、時としてもどかしさを感じさせる場面もある。
一方dは、アクセル操作に対するレスポンスが急になり、思っている以上に速く走らされる感がある。いわゆる“アクセルの早開き感”で、これはアクセルを深く踏み込みすべての操作が早い状況、例えばサーキット走行とか、よほど加減速のメリハリが明確になり、飛ばす際に限ると思う。dは同時にステアリングのパワーアシストを変化させて手応えを増し、クイックな印象に変える。
基本的に50:50の前後重量バランスに優れていて4輪の接地性が高く、ステアリングレスポンスに優れ、自然なロールと、とくに横Gを受けた際に、リヤタイヤのトー方向への変化が少ない、横方向に逃げないリヤサスの横剛性の高さが、リヤの接地性を一定に保ち、旋回速度を高めた際の安定性に優れている。
その、リヤの安定性があるうえで、極めてクイックに仕立てたステアリング特性を強調しても破綻しない操縦安定性がある、ということだ。