車種によっては売っても整備できない可能性もある
前出の事情通氏は「新車販売という視点では、どこのトヨタディーラーでも、トヨタ車ならなんでも買えるというのは、お客にとってはメリットが高いとしながらも、ディーラーはただ新車を売るだけの場所ではありません。販売したあとのアフターメンテナンスを行う場所でもあるのですが、そこでは少々混乱が起きそうなのです。来年5月ではすでに全店舗で全車種を扱うまでに1年を切っています。話を聞くと同じトヨタ車でも、今まで扱っていないので、現状では整備ができない車種もあるというのです」。
たとえばトヨタ店以外のトヨタディーラーに扱っていないクラウンに不具合があるとして持ち込まれたことがあったそうだ。しかし扱い車種でもなく、触ったこともないので対応できないとして断ったそうだ。
いまのところ例外なく全車種扱いとなるようなので、センチュリーやランドクルーザー、マイクロバスのコースターやJPNタクシーなども販売だけでなく、メンテナンス対応できる体制を組まなくてはならなくなるだろう。
果たして1年をきったいまから全国のメカニックに均一に技術指導したり、施設の再整備などができるのだろうか。せっかく全店舗全車種扱いにしても購入後のメンテナンスでモタモタしてしまえば、二度とトヨタ車を買ってもらえないケースも多くなるのではなかろうか。
具体的な計画は今後さらにディーラー各社と相談していく予定としているが、くれぐれもアフターメンテナンスの部分もしっかりケアし、けっして見切り発車のないようにしてもらいたい。
消費者側としては、全店舗全車種扱いだけ先行させるのではなく、その先にラインアップの整理及び統合、そして販売チャンネルの一元化など、それらを含めたトヨタの描く新しい販売ネットワークとはどういうものになるのか(東京のようなケースになるのかならないのか)まで同時に発表されないと不安は残ってしまう。
日産は全国的には、日産、プリンス、サティオのチャンネルは残すが、全店舗全車種扱いをしており、ホンダはプリモ、クリオ、ベルノを廃止し、ホンダカーズとして全車種全店扱いとしている。いずれも軽自動車、コンパクトカー、ミニバンに販売車種が大きく偏り、事実上消費者の選択肢が狭まってしまい、けっしてうまくいっているとはいえない状況になっている。
トヨタはその販売力から、“販売のトヨタ”といわれている。販売現場を軽んじる傾向の目立つほかの日系ブランドに対して、国内市場で圧倒的な販売シェアを誇るのは、まさに販売現場に寄り添ってきた賜物といっていい。
時代に合わせた再構築の必要性は認めるが、是非培ってきた、トヨタならではの販売現場というものを大切にして進め、けっしてお客に混乱を与えないようにしてほしい。