市場を切り開いた偉大なクルマが敗北! 「後出しじゃんけん」でバカ売れしたクルマ4選 (1/2ページ)

わずかな戦略の差が開拓者の優位性を奪う!

 自動車メーカーは家電や食品と同様に、ライバルとの熾烈な争いを続け、切磋琢磨(せっさたくま)してよりよい商品を作り出している。

 ここで取り上げるのは、同ジャンルのクルマの争いであり、後発のクルマに人気が集中した事例である。それを世間では「後出しじゃんけんの勝ち負け」と呼ぶこともあるにはあるが、それは100%正しくはない。

 つまり、デビューの日にちがそう遠くない場合、後発のクルマは決して先発のクルマを見ていないからだ。クルマの開発期間は数年かかるため、ライバルの姿を見てから何かを変える……なんてことは、微妙な価格設定ぐらいしかできないはずなのである。

 それでも後発のクルマが、同ジャンルの先発のクルマを、人気、販売台数で大きく引き離した例は数多い。

1)日産エルグランド/トヨタ・アルファード&ヴェルファイア

 日産エルグランドの初代は1997年にデビュー。当時はワンボックスタイプの名残を残すキャラバン/ホーミー・エルグランドというネーミングだったが、国産の元祖高級ミニバンの1台だった。

 その乗用車感覚を強めた2代目は2002年5月に発売されたが、なんと同月の翌日に華々しく登場したのが、トヨタ・アルファード

 兄弟車のヴェルファイアは2008年の3代目アルファードの発売と同時に追加されたのだが、2010年に3代目となったエルグランドがデビューしても、販売台数で圧倒。

 その理由のひとつがエルグランドにはない、初代から用意されたハイブリッドモデルの存在だ。2018年4月~2019年3月の国産乗用車販売台数ではアルファードが63351台で14位、ヴェルファイアが41429台で25位となっているが、エルグランドはベスト50位にも入っていない7431台なのである。

 エルグランドはデザイン、2列目席の居心地はなかなかで、3.5リッターV6のアメリカンな走行性能も悪くないのに、なぜそうなのか。やはり2010年からフルモデルチェンジされず、ハイブリッドモデルがなく、先進安全技術に取り残されたあたりが理由ではないだろうか。

2)ホンダ・ストリーム/トヨタ・ウィッシュ

 ホンダのストリームは2000年10月のデビュー。当時はミニバン全盛で、出せば売れた時代。ストリームもその例にもれず、5ナンバーサイズのMクラス低全高ミニバンとして大ヒット。

 しかし、ガチなライバルである2003年のトヨタ・ウィッシュの登場で、1車独占の座をあけることになったのだ。ストリームはその後、2006年にフルモデルチェンジ。

 1545mmという立体駐車場の入庫も容易な全高となり、ホンダらしいスポーティーな走行性能を持ち味とし、走りに特化した2列シートモデルをリリースしたものの、2009年に登場した2代目ウィッシュの人気に押され、2014年6月に姿を消すことになった。

 とはいえ、ウィッシュも2017年10月に消滅。ミニバン人気がMクラスでもヴォクシー&ノアのようなボックス型に移行したことが大きい。

 ちなみにストリームの後継車は3列シートを基本としたジェイドと言えるが、こちらも地味な存在となっている。2列シート仕様の走り、ラゲッジスペースの使い勝手などはかなりいいのだが、立ち位置が今では微妙ということだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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