製品の品質向上にも自動化は有効だ
もちろん、機械化のメリットはそれだけではない。すでに溶接工程などはほとんどが自動化されているが、正確さが求められる工程において機械に任せるというのはクオリティを保つのに有効な手段だ。またスピードの面でも人力では不可能なレベルに達している。
またホンダの例になるが、大ヒットモデルN-BOXを生産している溶接ラインでは人力を使っているのは部材の投入部分だけ。そこから先はすべて機械が溶接を行い、ボディを組み上げている。実質的にほとんど機械化・自動化されているという印象を受ける。
とはいえ、機械化できない部分もまだまだ多い。さまざまな工程の合間に実施される品質管理はまだまだ職人ワザであるし、冒頭で記した組立ラインにおけるパーツの組付けも人手によって行われている。
しかしながらシートを室内に入れるのは機械が行い、取り付けは人間が行うといったように徐々に機械の領域が増えているのも事実だ。技術的、コスト的に完全機械化はまだまだ難しいかもしれないが、着実に人が不要なラインを作ることをメーカーは目指している。
ただし、全自動で動いているように見える工場であっても、監視するスタッフは必要であるし、また機械のメンテナンスをする人員も必要となる。まったくの無人というわけにはいかないだろう。
また、自動車が趣味性の強い商品であり、細かい仕様などが異なることも完全自動化の壁となっている。少量多品種生産と自動化というのは相性が良いとはいえないからだ。
逆に、自動車がいま以上にコモディティ化して、ボディカラーや内装の仕様などが統一化されてくると自動化へのハードルが下がってくるといえる。クルマが完全自動運転となり、所有ではなくシェアリングが主流となるというのは予想される未来の話だが、そうなった頃には自動車工場からほとんど人間の姿は消えているかもしれない。