入力がドライバーに伝わるまでにはバネ以外に多くの要因が存在
また足まわりの硬い柔らかいはサスペンションコイルスプリングのバネ定数だけによるのではなく、路面から車体を通じドライバーへと伝わっていく振動伝達の経路にも多くの要因が存在する。コイルスプリングはそのうちのひとつに過ぎないのだ。
ほかに何があるかというと、振動の伝達経路を見ていくとわかりやすい。路面からの振動はまずタイヤに入りホイール、ハブ、ブッシュ、アーム、マウントブッシュ、クロスメンバー、ショックアブソーバ、車体フレーム、フロアパネルそしてシートレールからシートを通じてドライバーへと伝達され、ステアリングコラムからステアリングホイールを通じてドライバーの手にも伝わる。これらを通して感じた振動数を硬いか柔らかいかの二択だけで表現するというのはあまりにも乱暴だろう。
サスペンションアームがアルミか鋳鉄か、クロスメンバーはアルミダイキャストか鋳鉄か、ショックアブソーバの減衰特性や封入ガスの圧力は、など振動の伝達経路を知ることは、乗り心地や足まわりの硬さを評価する際に重要な情報源になるのだが、それをインタビューしても答えてくれるメーカーはほとんどない。
マツダはCX-8でリヤサスペンションのショックアブソーバアッパーマウントに、アルミダイキャストにインシュレーターラバーを仕込んだ手の込んだパーツを採用していた。それは一般道での乗り心地が素晴らしく、快適性が高く感じられたことの要因を尋ねた際に足まわりの担当エンジニアから新規採用パーツとして示されたのだが、それが主要因だと納得できるものだったわけだ。ただ同じアッパーマウントをCX-3やアテンザにも採用したが、こちらではCX-8ほどの効果が感じられず、クルマが代わり荷重が変われば印象も違ってくるいい例と言えた。
現代はさまざまなライターが雑誌やネットなど多くのメディア媒体でいろいろな表現をしてクルマの試乗記を紹介している。そこで表現される「足が硬い」とか「柔らかい」という評価はあまりに抽象的過ぎるだろう。読者の皆さんにおいては、自分の信頼できる評論家を見出だし、その記事をフォローして役立てていくことが大事だろう。