新車開発のテストに箱根が使われることも
また、かつて国産メーカーのエンジニアに聞いたところ「連続的な負荷によるオーバーヒート対策は公道で確認することが重要であるし、公道でしか試せない」という話もあった。具体的には、自動車メディアの聖地ともいえる『箱根ターンパイク』は、かなり負担が大きくオーバーヒートしないかどうかの確認テストに使うこともあるのだという。もっとも、箱根ターンパイクは公道ではあるが基本的には私道であり、時間を区切れば貸し切りもできるということがテストに向いているという部分もあるようだ。
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こうした耐久系のテストのほかにも開発段階において公道を走らせる意味はある。日本でいえばコンビニの駐車場へのアプローチなどで問題がないかといった日常生活に密着した部分までチェックすることがあるというほどだ。シャシーセッティングにおいても公道テストは重要だ。
各社のテストコースには様々な路面を再現したコースを持っているが、それでもリアルワールドでの煮詰めというのは、乗り心地やハンドリングのバランスを取るのに欠かせないという。最近では、トヨタのGRスープラが開発段階において欧州をはじめとした公道での開発期間を通常よりも長くとったというエピソードもあった。実際、擬装したスープラは日本の路上でもデビューの前から何度も目撃されている。
もっとも日本で目撃されたスープラの擬装車についていえば、「A90」というヘリテージを感じさせるロゴをあしらったカモフラージュであり、純粋に隠すためというよりはプロモーション的な意味合いも感じられた。いまやデビューぎりぎりまでクルマの姿を隠すという時代でもない。ティザーサイトなどで情報を小出しにしていくのは当たり前となっている。スープラにしても燃費以外の情報は正式デビュー前にだいたい明らかとなっていた。
これはスープラに限った話ではない。ティザー的なプロモーションの一環として擬装したクルマを走らせるというのは、もはや常套手段となっている。たとえばアメリカでは擬装したシボレー・コルベット(新型はミッドシップになるのでシルエットからして従来とは別物!)の姿がゼネラルモーターズのオフィシャルフォトとして提供されているほどだ。その側面には「07.18.19」という意味深な数字が掲げられている。
これはデビュー日時を示すものと言われているが、まさにプロモーションとしてのカモフラージュであることの好例といえるだろう。擬装車の写真を見る際には、そうした隠れたメッセージにも気を配ることもおもしろそうだ。