テストコースでの限られた試乗でも進化を体感
マツダ3の大きな特徴のひとつに、徹底した車内の静粛性レベル引き上げがある。その技術のひとつが、新たなる遮音、吸音対策。ボディまわりの穴をふさぐことでノイズの侵入を防ぐという観点からは、例えばドアスピーカーのための穴を開けずに済ませるため、ドアスピーカーをカウルサイドに移動。結果、ノイズの進入を押さえるとともに、スピーカー位置が乗員の耳に近くなり、よりよい音質を得ることにも貢献しているのだ。
加えて、ボディまわりの鉄は、振動を減衰させないので、振動エネルギーをBピラー内側などに張り付けた特殊樹脂で減衰させる手法を新開発。まさに、振動減衰力に富んだ、魔法のボディが実現できたのである。その特殊樹脂を張り付けた「減衰節」は10カ所にあり、そのほか減衰接着剤7.5m、剛性接着剤7.5mもの手当てが行われているからすごい。実際、路面の変化にも対応するリニアで穏やかな、質の高い静粛性実現しているという。具体的には、車内騒音レベルは上級SUVのCX-5に匹敵するとか。
一方、2LのスカイアクティブG、セダンの2.0S Lパッケージに乗り換えれば、プロトタイプの試乗車の個体によるエンジンフィールのバラつきは認められたものの、しっとり滑らかな加速フィールと、軽快感が魅力のファストバックに対して、より落ち着き感ある操縦性が特徴となる。こちらは本革シート仕様だったが、体重65kgの筆者だと、ファブリックシートほどお尻の絶妙な沈み込みが得られず、本革シートの選択は、やや体重のある人向けと思わせた。
ちなみにテストコースでの直進安定性は文句なく、140km/hでもビシリと直進。運転席&助手席、カーテン&フロントサイドに加え、ニーエアバッグまで全車標準とし、これまた全車標準のクルージング&トラフィックサポートCTSや、新たに前側方接近車両検知FCTAが加わった先進安全機能、全車速渋滞追従機能(AT車のみ)付きACC、ブラインドスポットモニタリング、レーンアシストシステムなどによって、連続高速走行、長距離・長時間のドライブも安心快適と思われる。
そして、KDDI製のSIMを装備することで、ヘルプネットのSOSコールボタンや、専用コネクトナビの装備で「MY MAZDA」というオペレーターサービスを利用することも可能。後者は緊急時のみの対応で、遠隔ナビ設定やお店の紹介などには対応していないが、安心という点では大きく進化したと言えるだろう(サービスの拡充は望みたいが)。
マツダ3が今年の国産コンパクトカーの目玉の1台であることは、今回の、ごく短時間のプロトタイプ試乗からでも明らか。走行性能における、操る側の基本中の基本と言える、どんな先進安全機能よりも先に語るべき、運転姿勢、運転の疲れにくさにフォーカスを当てたクルマづくりは、なるほど、勢いに乗るマツダの新世代商品群、第一弾のクルマへの深いこだわり・見識に思えた。