バッテリーの再利用を難しくする急速充電は短絡的思考
2010年に初代リーフを市販した日産自動車は、EV発売前にリチウムイオンバッテリーを再利用するためのフォーアールエナジー社を設立し、すでに中古バッテリーの販売を始めている。日産はそのように、10年近く前からEV開発だけでなく、リチウムイオンバッテリーのその後も視野に入れた電動化時代を見据えていた。
それに対し、ピエヒにしてもポルシェにしても、ドイツ流ともいえるクルマベストの発想でEVを開発し、EV後のことはほとんど視野にないかに見える。いくらスポーツカーといえども、環境の時代といわれる21世紀に、資源を無駄にするクルマづくりに正当性はあるだろうか。
リチウム資源は、世界13億台の自動車保有台数すべてを電動化する量がないとされている。したがって、クルマの数を減らすためにシェアリングといった新たな利用法が工夫されようとしている。また、EVを電源のひとつと考えるVPP(バーチャル・パワー・プラント)によって、家電製品を含む生活の電動化へ向け、電力消費を社会、そして世界全体で減らす構想も日産などは考えている。
クルマにとって運転の楽しさは魅力のひとつではあるが、すべてではない。ドイツ流のクルマベストしか視野にないEV開発は、ガソリンを燃やす20世紀型の思考であり、いずれ社会の批判を浴びるのではないだろうか。ドイツは、ガソリンエンジン車を発明し、牽引してきた135年以上の歴史を持つが、リチウムイオンバッテリーを使うEVは日本がその総合価値を主導している。ピエヒが掲げる、50年後にはクラシックスポーツとなることに恥じないEVを21世紀の価値観で生み出してほしいものだ。