パーツの流用ができなくなったのが理由のひとつ
ひとつには、スポーツカーに流用できる乗用車が減ったから。例えば、かつてのトヨタのカローラレビン/スプリンタートレノは、大衆車のカローラにパワフルなDOHCエンジンを載せて、ちょこちょこいじれば出来上がり! 大量生産ができれば、価格は抑えられるし、もともと車重が軽いから、スポーツカーらしい走りが楽しめた。
昭和末期までは、大衆車でもFR車がたくさんあったし、兄弟車も多かったので、いろいろなクルマのパーツが流用できたのも大きい。
それに対し、いまのクルマは衝突安全その他の規制が厳しく、そのために車体が重たくなっている。さらに30年前は5ナンバーサイズが主流だったのに、いまは3ナンバーが当たり前。車体が大きいのでクルマが重い。
そのうえボディ剛性もスポーツカーに求められる大事なファクターになってきているので、ハードルはどんどん高くなる。まさか売れ筋のミニバンベースで、スポーツカーともいかないし……。
ともかく、大きく重たいクルマをスポーティに走らせるには、パワフルなエンジン、太いタイヤ、大きなブレーキなどが必要になるので、専用パーツが用意される。
また軽量化のために、アルミやカーボンなどの高価なパーツも投入されるので、これらがすべて価格に跳ね返り、コストアップにつながっているというわけだ。
おまけに、快適装備は一通り欲しい。燃費も大事。質感も欲しいとなると、安いクルマなんて作れるわけがない!
とどめに、スポーツカー冬の時代、若者のクルマ離れ、ときた日には、大量生産でコストダウンという手も使えず、もはやスポーツカーを作り続けてくれているだけで恩の字といえるぐらい状況は厳しい。
一方、高級スポーツカー、スーパーカーは、メーカーのブランド価値の象徴なので、車体もエンジンもプレミアム。アルミもカーボンも本革も、高価な材料を惜しみなく使って、セレブなオーナーを満足させるべく腐心しているので、価格はどんどん上昇気味。販売台数も限定したりして、さらに強気のプライスに。
スポーツカーの高価格化が続いているのはこのような理由と考えられる。けっきょくは、スポーツカーだけでなくクルマそのものが売れないから、価格を下げられないというのが一番の原因。根本的には大企業を中心に正規雇用を増やし、給料を上げて終身雇用を守らないと、クルマも住宅も、洋服だって売れないだろうし、結婚して子供を産もうという人も増えないわけで、この格差社会を何とかしないと、楽しくスポーツカーに乗ることもできなくなってしまうのでは?