稼ぎ頭のピックアップトラックが日本市場に合っていない
別の角度から、フォードが日本から撤退した理由を考えることもできる。それは、ピックアップトラックFシリーズの存在だ。
フォードにとっての大黒柱は、F-150を中核とするFシリーズである。フォードの幹部は昔から「ウチは、トラックカンパニーだ」と言ってきた。北米市場でモデル別販売台数ランキングでは、過去30数年間に渡りFシリーズが独占している。とくに90年代中盤からは、ピックアップトラックの乗用車化が加速して、さらにはFシリーズを基盤とした各種SUVのラインアップが進んだ。
こうしたフォードにとっての稼ぎ頭が、日本市場では通用しないことが、フォード日本撤退を決定付けたといって良い。日本でF-150のようなフルサイズピックアップトラックを愛用する人は、並行輸入車を購入する一部の層はいるが、その数は極めて少ない。だが、仮に日本におけるジープ・ラングラーのような世界観をF-150でも実現できていれば、フォードの日本市場での展開も変わったかもしれない。
フォードの現状での世界戦略を考えると、フォードが近年中に日本へ再上陸する可能性は限りなくゼロに近いと思う。