無駄な投資を徹底的に切るための決断
フォードが日本から撤退した理由は単純だ。日本への投資が、無駄だからだ。無駄とは端的に、投資に対する利益が少ないことを意味する。なにせ、日本でアメ車は超マイナーな存在。米トランプ大統領が「アメリカでは日本車が大量に販売されているのに、日本でアメ車の販売台数は極めて少ない。これは、日本に非関税障壁があるからだ」などと主張することが多い。だが、実態は違う。アメ車という商品が日本市場にマッチしない。ただ、それだけのことだ。
こうした状況は、いまに始まった話ではない。第二次世界大戦後から1960年代にかけては、進駐軍や富裕層の間でアメ車が使われたが、70年代以降になると、アメ車は日本でマイナーな存在になった。
そうしたなかで、GM、フォード、クライスラー(当時)はヤナセ、西武自動車、三井物産といった輸入代理店を通じて、日本で販売を続けた後、3社それぞれが日本法人格となった。それでも、ジープなど特徴が強い一部のモデルを除いて、販売台数は伸びなかった。
フォードは、リンカーンなどの大型車に始まり、トーラスやフォーカスなどの中小型車、またSUVとしてエクスプローラーを投入したが、投資に対する利益の増加は極めて低かった。
また、自動車産業界全体としてのトレンドを見ると、EV、自動運転、シェアリングなど新たなるビジネス領域への対応が、自動車メーカーとして必須の時代。フォードとしても、世界市場における投資の分担を大きく見直すべき時期になった。そうしたなか、現状での収益性と市場の将来性を鑑みて、日本市場からの撤退を決めた。