高すぎると一部不評のJPNタクシーにチャンスを見いだすヒュンダイの日本再挑戦 (2/2ページ)

両国の若者は対立意識があまりない

 もともとセダンタイプのタクシー車両ニーズというものも根強くあるなか、JPNタクシーは車両価格の高さもあり、手放しで業界から歓迎されているともいえない様子。事実、都心部だけでなく、郊外や地方部では先代クラウン ロイヤルサルーン ハイブリッドのタクシーが目立っている。ヒュンダイにとっては乗用車の日本市場再参入の絶好の足掛かりができているといっても過言ではない。

 過去にヒュンダイはグレンジャーという大型セダンについて、自動ドアへの改造費などをサポートしてタクシー車両として積極的に販売していたことがあり、そのころ販売したグレンジャータクシーが意外なほどまだ現役で走っているとのこと。まず手始めにそのあたりから、新車への代替えを進めていくのではないかといった話も聞く。皮肉な話だが、JPNタクシーの登場がヒュンダイ乗用車再参入の門戸を広げようとしているのかもしれない。

 個人向け乗用車販売の復活にあたっては、10年前の撤退により失った販売網だけでなく、アフターサービスネットワークの再構築が必要となる。しかし、タクシー事業者への販売では、自社整備工場を持っていたり、懇意にしている自動車整備工場があったりして、売り切り(アフターメンテナンスの管理を購入者にしてもらう)というケースも多くなるので、個人向け販売より売りやすいという部分もある。

 世界的に見ても、タクシー車両などフリート販売でまず足固めをして、その後個人向け販売を積極化させていくというのはヒュンダイビジネスの常套手段となっている。

 一見するとこのタイミングでの再参入検討は最悪にも見えるが、政府間の関係がこれだけ冷え切っていても、日本の中学生や高校生の間では韓流ブームが再燃しており、韓国でも同世代の若者は日本文化への抵抗はあまりないとも聞く。次の世代へ託すというわけではないが、彼らが免許を取得しはじめる10年後あたりを見越して、いまから東京モーターショーへ出展してマーケットリサーチを行い、それと同時にタクシー車両で販売実績を稼いでいきながら、本格的な個人向け乗用車販売のタイミングを見計るような慎重さが必要な気もする。

 だが報道では、“東京オリンピック開催までには”というタイミングで乗用車販売の復活を進めようとしている様子。これでは10年前に一度撤退しているので、マイナスからのスタートとなることを考えても、10年前の二の舞で終わりそうな可能性も十分孕んでいる。しかも今回また再度失敗して日本から撤退するころには、下手をすれば日本市場でも中国車の存在が高まっていてもおかしくない。そうなれば、ヒュンダイにとって“三度目の正直”のチャンスすら訪れない可能性が高いことも十分考慮したほうがいいかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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