乗用車には障壁があっても商用車のハードルは低い
前回(第45回/2017年開催)の東京モーターショーには出展しなかった韓国ヒュンダイ自動車が、今年開催される第46回東京モーターショー2019年に出展すると韓国メディアが報道した。
ヒュンダイ自動車は2001年に乗用車販売を日本市場で開始した。その後2010年に乗用車販売から撤退しているが、その後も大型観光バスのユニバースを日本国内で販売している。そのため前回は出展していなかったものの、乗用車販売撤退後も東京モーターショーへの商用車ブースへの出展を続けていた。そして今回の東京モーターショーでは、商用車ブースでバスを展示するのではなく、乗用車のみを展示してくるというのである。
事情通によると、「ユニバースの販売もやや頭打ち傾向になっているとのことで、そこも含めて日本市場での乗用車販売復活の検討を行ったようです」とのこと。
しかしヒュンダイサイドも昨今の日本と韓国の政治レベルでの尋常ではない関係悪化は熟知しているはず。そのためどのような形で日本市場における乗用車の再参入を進めていくか慎重な検討が続いているようである。そのなかで着目したのが、ソナタ(カムリのライバル)あたりをベースとしたタクシー車両でまず再参入を試みようというプランである。
韓国車はもともとLPガス仕様のラインアップが充実しており、性能面では日本と互角どころかそれ以上とも言われている。ソナタベースのタクシーは韓国国内だけでなく、シンガポールなど海外での営業運行実績もある。政府間の問題とはいえ、現状で日本において個人所有向けの乗用車販売を始めるというのはかなりリスクが高い。一方でタクシー車両のような営業車ならば、すでに地方部では中国BYD製のBEV(純電動)路線バスが実際に導入され営業運行されているのが注目されるなど、中国車や韓国車ということが、個人向け乗用車ほど大きく影響することはないのである。
しかも、ヒュンダイタクシー車両の日本市場参入の助け舟ともいえるのが、トヨタのJPNタクシーの存在である。JPNタクシーは標準グレードですら車両価格が327万7800円とかなり高額となっている。JPNタクシーにその座を譲り生産を終了したクラウンコンフォートのスタンダードグレードの車両価格と比較すると、約100万円の価格アップとなっている。東京などの都市部の大手タクシー事業者ならば新車での代替えも可能だが、筆者が街なかで見ている限りでは、東京都心部ですらここのところ、先代クラウン ロイヤルサルーン ハイブリッドのタクシーをよく見かけるようになった。
先代クラウン ロイヤルサルーン ハイブリッドならば150万円ほどでそこそこの状態の中古車をすぐ探すことができるので、「JPNタクシーを新車で買うならば……」ということで導入している事業者があるようだ。もともとクラウンコンフォート時代から、新車価格が高く、新車ではなく中古車での代替えを行っていた事業者も多かったので、JPNタクシーの導入に二の足を踏んでいるケースも多い。それでは日産は……といえば、商用バンのNV200バネットベースの車両しかない。たまたま乗り合わせたタクシー乗務員は、「日産さんが、セダンタイプとかJPNとは違う車種を出してくれればいいんですけどね」と、ポツリとこぼした。
JPNタクシーを買うならば「いっそ」とのことで、そのベースとなっているシエンタの2列シート車を購入して、LPガス対応にもなる改造をした“トリプルハイブリッド”にしてタクシー車両として導入する事業者もあると聞く。