最近は叩いて直せる職人が減っている
レストア的な作業では腐食部分を切って、パネル片を鉄板を叩いて作って溶接してはめ込むというのもやる。熟練職人であれば、ボディパネルすべてを叩いて作るのも可能だったりする。
老練の職人さんに聞くと「丁稚に入ると一枚の鉄板を叩いて、鍋やヤカンを作って練習したもの」というほど、超絶技法の世界。ベコベコのボディもハンマーで直して、パテなしで直すというのも当たり前だったが、現在は叩けない職人が増えているのが問題になっている。そのほか、損傷が激しいパネルは交換となる。フロントフェンダーなどはボルト止めなので簡単だが、リヤフェンダーやサイドシル、場合によってはルーフパネルの交換は溶接を外して、位置を決めて新品を溶接するなど手間はかかる。
最近では叩けるにしても、あらかた直してパテを盛って平にするというのが増えていたり、叩く手間をかけるよりパネル交換というのも多い。技術の低下以外にも保険修理が増えていることや、直しにくい超高張力鋼板の増加、時間当たりの収益追求など、背景にある問題はさまざまだ。
時代が進化したというか、変わったといえばそれまでだが、超厚盛りしたパテはしばらくすると割れたり、剥がれたりのリスクもある。下手な職人がやればチリが合っていないこともある。仕上がりにシビアで、クレームの出しやすいディーラーや、車両保険使用時に保険会社指定の工場に入庫するのもいいが、近所で古くからの板金工場があれば、そこも検討してみるのもいいかもしれない。