スポーティさを際立たせる細かな演出も見逃せない
加えてもうひとつ。今回からRモード選択時にはシフトチェンジの際に「ババンッ」という音が耳に届くようになった。じつはこれ、ミッション本体やマフラーから出ている音ではなく、アクティブ・サウンド・コントロール(Pure editionを除くBOSEサウンドシステム装着車)に備わるギミックのひとつ。MY17以降の同機能搭載車は、Rモード選択時(どのスイッチでも可)に室内のスピーカーから擬似的にエンジン&エキゾーストノートに模した音を出していた。今回のMY20では、シフトチェンジ時(アップ/ダウンともに)にギヤが切り替わったことを聴覚的にも体感できる新機能が付加されたのだ。
文字(擬音)にすると難しいのだが、たとえばゴルフGTIなどのDCT(デュアルクラッチトランスミッション)+ターボ車で、シフトチェンジのたびに「ババッ!」と点火カット特有のサウンドが出るのを聞いたことがないだろうか? スーパーGTなどのレーシングカーでもよく見られる(聞かれる?)特徴だ。筆者はそのことを知らず、最初マフラーもしくはミッションから音が出ていると勘違いしたほど。まさかスピーカーからそんな疑似サウンドが出ているとは思わなかった。ちなみに、これに関してはオーナーズマニュアルに記載されているが、メーカーの公式リリースには掲載されていない。実際にMY20に試乗するチャンスがあったら、ぜひともトランスミッションのRモードをお試しいただきたい。
肝心のハンドリングについてだが、こちらもダンパーの減衰力がもっともハード側に固定される「Rモード」時のセッティングを見直したとのことで、トランスミッションのRモード同様、よりスポーティな走りを楽しめるようになっている。バネやダンパー、タイヤ自体にはMY18からの変更はないというものの、実際にドライブしてみると、従来型よりも明らかに動きが軽快で、ヘアピンのように大きく回りこむようなカーブでもグイグイとノーズをインに向けることができる。立ち上がりでパワーを与えても腰が砕けるようなこともなく、ボディ前後とサスペンションの動きが常にリンクしているイメージだ。
操舵/加速/減速といったドライバー側の一連の操作に対して、まったくもって素直に反応してくれる。GT-Rというと、ハイパワーで獰猛というイメージが付きまとうが、最新のMY20に対しては「超速かつ洗練」という称号を与えたい。
なお、今回は東京~北海道を自走で往復するという3000km超(!)のロングツーリングを敢行。当然、高速巡行区間も長かったが、GT-Rは「真っ直ぐも得意」であることが長時間のドライブをラクなモノにしてくれた。日産自動車の田村宏志さんがR35のチーフ・プロダクト・スペシャリスト(CPS)に着任してからのMY14以降、基準車はGT(グランドツアラー)の性能を磨き、R(レーシング)の性能をNISMOで表現するという明確な棲み分けができたわけだが、今回のMY20基準車は、GTの性能をさらに上へと引き上げ、さらに「Rモード」というもうひとつの顔をわかりやすい形で付加したと言えるだろう。
ちなみに、往年の日産ワークスカラーが鮮烈な印象を与える2020年3月までの期間限定・50周年記念車は、内外装以外、走りに関する部分は基準車に準ずる。こうなると、今回大幅にアップグレードされたGT-R NISMOの走りも気になるところだが、今回のロングツーリングと合わせて、2019年8月1日発売予定の「GT-R Magazine」にて詳細にレポートする予定なので、期待してほしい。