【試乗】3000kmを走破! 速攻独占試乗に成功した日産GT-R「2020年モデル」の実力 (2/3ページ)

トランスミッションのRモードはAT時でも走りを楽しめる仕様に

 前述した「軽さ」はさらにスムースさを増したGR6型デュアルクラッチトランスミッションの所作によるところも大きい。こちらはMY20の変更点としてメーカーの公式発表としては謳われていないのだが、R35のミッションはモデルイヤー毎というよりも、それ以上に細かいサイクルで改善・改良が重ねられている。初期モデルでは発進時や変速のたびに「ガチャガチャ」という音や前後に「ガクガク」振動するスナッチのような症状が発生していた。

 レーシングカーのようなスパルタンさ、と評することもできるが、日常の足として使うには少々「慣れ」が必要だったことも確か。しかし、最新のMY20は初期モデルとは比べものにならないほど作動が滑らかで、車庫入れなどの低速時にギクシャクすることも皆無。GT-Rを生まれて初めてドライブする人でも、乗り込んだ瞬間からまったく違和感なく走り出すことができると思う。

 もう一点、トランスミッションで特筆すべき点が、MY20から変更された「Rモード」選択時の制御である。R35型のGT-Rには、センタークラスターに3つのスイッチが備わり、左から「トランスミッション」/「ダンパー」/「VDC-R(横滑り制御装置)」をそれぞれ任意の3パターンに切り替えることができる。トランスミッションは真ん中が「ノーマル」で下に押すと燃費重視の「SAVE」に、上に押し上げるとスポーツ走行に最適な「Rモード」に変更される。

 これまでにもトランスミッションのRモードは存在していたが、ノーマルモードでもシフトチェンジはかなり早いし、変速を機械任せにするA(オートマチック)モード時にはあまり使用するシチュエーションがないと感じていた。しかし、MY20ではAモード時におけるRのセッティングをかなり煮詰めたとのこと。そこで、実際にワインディング路で試してみた。

 変速は完全にクルマ任せ(Aモード)とし、アップダウンの続く峠道を走らせる。すると、街中とは明らかに違うシフトスケジュールに切り替わり、積極的に低めのギヤを選んでピックアップの鋭い中~高回転域をキープしてくれる。それも、レッドゾーンまで「無理矢理」引っ張るような格好ではなく、ドライバーが「ここら辺でシフトアップしたいな」と感じた回転に近いところで次のギヤへとエンゲージ。逆に「下げたい」と思ったところでシフトダウンしてくれる。また、コーナリングの途中でキックダウンしてしまい下のギヤに切り替わるという「余計なお世話」もない。そのカラクリは、クルマ側が車速や加減速G/横G、アクセル開度等の各データを読み取り、その際の走行シチュエーションに最適なギヤを選択するというものらしい。

 つまり、走り方によって同じRモードでも制御が異なるということだ。試しに街中でRモードを選択すると、それほど高回転まで引っ張らずにシフトアップするし、逆にガンガンとシフトを下げることもない。確かに、まるでその時のドライバーの意思を読み取っているかのように振る舞ってくれるのだ。

 近年、欧州のスーパースポーツなどもほとんどが2ペダル化されており、R35のようにシフトスケジュールをスイッチひとつで変更できるクルマも少なくない。しかし、もっとも「ハード(スポーツ)」な走行を想定したセットアップを選択すると、たとえ街乗りでもとにかく高回転域をキープしたがり、逆に乗りにくくなってしまうことも間々ある。そういう意味では、MY20のRモード制御は「ドライバーに優しい」と感じるし、場合によってはサーキット走行でもパドルによるマニュアルシフトよりAモードのほうが速くラクに走れるだろう。


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