開発の初期段階からスピーカーの配置などにもこだわった
5月24日より日本でも販売が開始された新型マツダ3。その全車に標準される8スピーカーのオーディオシステム「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」は、多くのオーディオマニアが理想とする“原音忠実再生”に限りなく近い、驚愕のクオリティを備えていた。
さて、原音忠実再生とは何だろうか? その答えは『音源に記録されている情報を正しく再生できる』こと、これに尽きる。英語で言えば「High Fidelity」、「Hi-Fi」(ハイファイ)と言えば、オーディオマニアでなくとも耳にしたことのある人は多いだろう。
マツダがこの新たなオーディオシステムを開発するにあたり目指したのは、この原音忠実再生に加え、“好みの音量で聴ける”ことだという。というのも、音楽も音質も人によって好みは大きく異なり、理想のオーディオシステムをひとつに決めることは難しいと、マツダは考えたからだ。では、どのような方法で、このふたつの目標を実現しようとしたのだろうか?
まず好みの音量で聴けることについては、カーオーディオでは車体側の音響特性も重要になる。走行中はロードノイズがとくに500Hz以下、風切り音がほぼ全域、とりわけ600〜1000Hzのオーディオの音をかき消すからだ。
そのため、ねじり変形が大きいBピラー上部を含む計10カ所に振動エネルギーを集めて吸収する減衰節を設定するとともに、フロアを横断する骨格に減衰接着剤を使用。さらに生産工程上必要となる穴とその大きさを最小限にし、なおかつ残った穴も部品の組み合わせによって塞がるよう設計している。これにより、絶対的なノイズの音量を減らすだけではなく、きれいな路面から荒れた路面に移った際のロードノイズの増幅を抑え、人間が不快に感じる急激な音圧の変化を低減した。
そして、フロントバルクヘッド付近や後席など室内の隅は共振の腹であり音圧が増加しやすく、逆にフロントドアは共振の節であり音圧が減少しやすいという音響特性に着目し、12cmボックスウーファーをフロントドアではなくカウルサイド(Aピラーの根元)に配置。低周波域の再生能力を高めつつ、オーディオ再生時の異音低減、NVH改善も図っている。
また、原音忠実再生については、2.5cmツィーターをAピラー、8cmミッドレンジスピーカーをフロントドア上部前方(とリヤドア)に配置。インパネ上に配置していた先代アクセラに対しフロントガラスからの反射音を低減するとともに、スピーカーからの音がより多く乗員の耳に直接届くよう改善した。
これに伴い、プリセットのリスニングポジションを全席と運転席の2種類設定。全席ではコンサートホールのような音の広がり、運転席ではアーティストが目の前で歌い演奏しているかのような、ダイレクト感溢れるサウンドを実現している。