どんな道でも気持ちよく走れる日産のすべてを注ぎ込んだ自信作
新型デイズの斬新なデザインを実現した技術力も見逃せないポイントだ。豊かな抑揚を持つフォルムや、角Rの小さなプレスラインなどは、従来の軽では見られなかった繊細かつ大胆な表現。コンパクトクラス以上の存在感、質感の高さを訴求するモデルとなんら変わらない手法で作られている。
「そうおっしゃっていただけるとうれしいですね。サイズに制限のあるボディで、あれだけの抑揚を付けながらシンプルに見せるのは本当に大変な苦労でした。新型は室内空間も広がっていますから、デザインのために使える寸法がもともと少なくなっています。ですから、ドアの設計を見直すなど、設計サイドでの苦労も大きかったですね。こうしたデザインの実現のためにも『技術の日産』が生かされているわけです」
ボディの抑揚の表現には、生産現場の協力も欠かせない。たとえば、プレスラインの角Rも、Rが小さいと、プレス時に「線ズレ」という現象が起こりやすい。そうした問題を克服するには、試作段階の試行錯誤も必要となるため、開発と生産の協力体制が不可欠だ。だが、もともと開発と生産は、ある意味で相容れない立場にある。開発サイドは、時代ごとの新しい表現を模索して、その魅力をお客さまに届けたいと考える立場。対して生産サイドは、高い品質を安定的にお客さまに届けることが最大の使命。そんな生産サイドにとって、開発の“冒険”は好ましいとは言えないのだ。
「しかも今回は、生産を担当するのが別の会社ですからね。日産の私たちが思い描くクルマが、日産とは違う歴史を持った工場で、本当に狙い通りに生産できるのか。日産同士なら同じ建物のなかにいて、すぐに顔も合わせられますが、新型デイズを生産する三菱さんの工場は、われわれのいる神奈川県から物理的な距離も大きい。今回のような役割分担が初めてということもあり、開発が始まった当初は不安もありました」
そんな不安を解消し、理想を実現させるために、齊藤さんたちが取った行動は、労を惜しまず足を運んで、顔を合わせるということだった。
「愚直なやり方かもしれませんが、やはり必要なのは、相手のふところに飛び込んで、お互いの考えや意見を尊重しながら、コミュニケーションを取ることだと思ったんです。われわれも岡山に何度も足を運びましたし、岡山の生産現場の人たちにもこちらに来てもらったりして試作を確認したり、アイディアを出し合ったり、徹底的な議論をしたり、本当に濃密なやりとりをしながら完成にこぎつけたんです。お互いの協力があったからできたデザインだと思います」
不安と戦いながら、妥協を許さずに進めてきた開発プロジェクト。苦労は大きかったが、理想を実現させることができた喜びはそれ以上に大きかったという齊藤さん。
「日産という社名は、日本の産業をよくしたいという想いが由来です。新型デイズも、細い路地や、解けかかった雪でぬかるんだ道、急坂や高速道路など、日本のどんな道でもスイスイ走りたいというお客さまのご要望に応えたいと考えて作ったクルマです。日産の新しい自信作を、ぜひ体感してみてください」
そう言いながら、にっこりと笑ってみせてくれた齊藤さん。その笑顔は、新型デイズへの自信の表れに違いない。