軽自動車という小さなキャンパスにこだわりを詰め込んだ
“実物”による検証を徹底的に行った今回の開発。そこに時間をかけることができたのは、デジタルモデラーがデジタルならではの効率のよさで、前段階での検証を徹底的に重ねたからこそだ。担当したのはデジタルモデラーの小林俊文さん。
「デザイナーがスケッチで描いた狙いをいかに具現化するか。ときにはさまざまな部署と連携しながらデザインの具現化を進めていきます。たとえば、すごく立体感のあるドアもそんな成果のひとつです。インパネのトップが広いことを利用して、設計サイドにも協力してもらって実現した表現です。柔らかく、それでいて強さも感じられる立体感は、従来の軽自動車のドアにはなかった表現だと思います」
新しい表現を随所に盛り込みながら、高い質感をも備えたインテリア。その実現に欠かせなかったのがパーシブド・クオリティ(感性品質)へのこだわりだ。たとえば分割線を極力見せないようにする工夫もそのひとつ。担当したのは関谷崇寛さん。
「軽自動車はコンパクトな分、分割線が目立ちやすいんです。いかに乗員の目に触れないようにするか。デザインのラインのなかにインテグレーションしたり、別のパーツなどに隠してしまうなど、お客さまがノイズとして感じないような処理をチーム全体で作り上げていきました」
関谷さんのこだわりはエクステリアにも活かされている。ハイウェイスターのヘッドランプまわりのデザイン処理もそのひとつ。パーティングラインを見せないボンネットとの合わせ方は、大人の色気と気品を備えたような美しさだ。
デザイナーのみなさんのお話を伺ってから、改めて新型デイズを見てみると、全体としてシンプルなイメージのデザインのなかに、驚くほどたくさんの繊細な企みが詰め込まれていることがわかる。シンプル・イコール「単純」ではない。そんなことを考えさせてくれる新型デイズのデザインは、日産デザインの持てる力を余すところなく発揮させて作り上げたものと言えそうだ。