e-POWERとプロパイロット効果で止まらぬ勢い! 日産は巨人トヨタに勝てるのか? (2/2ページ)

日産にとってトヨタの販売チャネル再編が転機となるか?

 こうした差は商品力だけで生まれているわけではありません。販売網によるところも大きいのです。おおよその数字でいうと、トヨタの販売店舗数は4900カ所、それに対して日産は2100カ所程度といわれていますから、半分以下の規模です。そして、これから販売店舗を増やすというのは難しいことです。もし日産がトヨタの販売台数を抜こうと思ったら、一店舗あたりでトヨタの倍以上を売らなければいけません。仮説としても考慮するのは難しい数字であることは自明でしょう。

 しかしながら、トヨタは販売チャネルの統合、販売店の整理をすることを発表しています。街道などを走っているとトヨタ店とネッツ店、トヨペット店とカローラ店といった店舗が近接しているのを見ることもありますが、販売チャネルの統合により将来的には店舗数は減っていくことが予想されます。そうなると、日産の店舗数は増えなくとも、結果としてトヨタとの店舗数の差が縮まることになるでしょう。トヨタの販売店が統合で混乱するタイミングにあわせて、日産が国内でウケる商品を投入できれば、チャンスがあるかもしれません。

 とはいっても、既存顧客の母数で差がありますから、逆転するというのは難しいでしょう。日産のノート(コンパクトカー)やセレナ(Mクラスミニバン)の好調というのは、この2車種に軽自動車を合わせたモデルに販売リソースを集中しているという面もあるからです。日産がトヨタを抜くには、このふたつ以外のカテゴリーでも勝負権のとれるようなモデルをラインアップしていく必要があるでしょう。

 ただし、ここまでの実績や販売の条件はクルマが個人所有されるもの、という前提に立っています。今後、カーシェアリングやサブスクリプションサービスといった新しいクルマの利用法が主流になってくると、クルマの販売台数のトレンドも変わってくることでしょう。すでに日産は「e-シェアモビ」という電動車両に特化したシェアリングサービスを始めています。一方、トヨタは「KINTO」というサブスクリプションサービスを今夏から全国展開する予定です。クルマ単体の魅力ではなく、こうした新しいサービスの魅力によって結果としての販売台数が変わってくる可能性も十分に考えられます。

 そうしたゲームチェンジが起きれば、ことによれば大逆転というのもあり得るかもしれません。もっともゲームチェンジに対して積極的に変わろうとしている意識はトヨタのほうが強い印象もあります。はたして、日産が逆転劇を見せてくれるのでしょうか。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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