F1やスーパーGTもパドルシフトが増えてAT化に近づいている
何度も書いてきたが、僕自身はどちらかというとAT(オートマチックトランスミッション)派だ。3ペダルのMT(マニュアルトランスミッション)車のほうがスポーティだというのが世の一般的な考え方だが、そうは思わない。
たとえばハイスピードでコーナリングしながらシフトチェンジが必要になった場合、MTだと左足をフットレストから外してクラッチペダルを操作し、ステアリングからは片手を離してシフトレバーを操作しなければならない。サーキット走行など高速走行時に正確にライントレースしながらシフト操作するには、バケットシートに5点式以上のシートベルトで身体をガッチリ固定していなければならない。普通乗用車の快適なシートにゆるゆるの3点式シートベルト装着状態で、正確なライントレースとシフト操作を両立するのはかなり無理があるのだ。
近年のレーシングカーは速い上級カテゴリーになるほど2ペダルのステアリングパドルが当たり前。スーパーGTマシンもF1もWRCのラリーマシンだって2ペダル化されている。ただこれらはATではない。ギヤ選択はパドル操作でドライバーがマニュアル操作するという意味では、MTに分類すべきなのかもしれない。
だが、じつはこうしたレーシングマシンも本当は完全なATにすればもっと速くなる。ドライバーからパドル操作も排除すれば、よりステアリング操作に集中でき速く走れる。エンジンのパワーバンドやトルク伝達効率も、コンピュータ制御したほうが圧倒的に有利になる。どのカテゴリーにおいてもそうなっていないのは、レギュレーションによりAT化が抑制されているからにほかならない。
もしAT化が自由選択制となれば有力チームはいち早くAT化するだろう。だがプライベーターや弱小チームでは、対応が追いつかず不利になる。そこでイコールコンディション化を保つためにマニュアル操作をするよう定めているわけだ。